街角で、流れてくる曲に思わず耳を傾ける、足を止める。
そんな瞬間はないだろうか。
クラシックからシャンソン、ジャズ、映画音楽、歌謡曲、タンゴ・・・
いろんなジャンルの音楽があるが、この季節になると、「枯葉」や
ショパンのワルツ7番などはとくになつかしさで胸がいっぱいになる。
また、ベートーベンのピアノソナタ8番は小学時代の自分を思い出す。
「悲愴ってなんだろう?」このソナタにつけられた名前。この言葉が
子どもながらにも心にしみて、急に大人びた気持ちになったことを
思い出す。この曲は今でも最も好きなソナタ曲のひとつ。
音楽はその時代や、その当時出会った人を想い出す、人生の走馬灯。
生きる時間が長くなると、思い出も増えて、音楽があればその人に
再会できる、まるで人生をもう一度生きられる。そんな気持ちにさえなる。
最近ある方に、シューベルトの即興曲のひとつが私のイメージだと
教えていただいて、なんだかもったいない例えだと思った。
その曲は弾いたことがなかったが、改めて耳にして、トレモロが美しく、
「ああ、これが!」と思わず感嘆。
シューベルトが生み出す優しくも力強い、愛に満ちた歌心を感じ、
こんな音楽のように生きたいなと思った次第。
その曲で自分を思い出していただけるとは、光栄で幸せなこと。
あの曲を聴くと思い出す。
そんな瞬間があると、心が揺れたり、目頭が熱くなったり・・・。
音楽は、実に不思議だ。
自分の中に眠っている記憶が引き起こされて、蘇る。
音楽があると、二度生きられる。音楽があると、また会える。
そんな気持ちになる。
あの曲を聴くと思い出す。
そんな人たちを、ゆっくりじっくり思い出したい季節。
そして、
音楽を通じて、一人でも多くの方に、
歩んできた人生の道のりを、楽しみながら
思い出していただける機会を作っていきたい。
あの曲を聴くと思い出す・・・
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