たまたま買い物に入ったお店、猫が飼われていた。
看板猫なのだろう。
用を済ませて帰ろうとしたら、二人の少女が取っ組み合いながら
店に入ってきた。
ひとりはその店の娘さん?ともう一人が喧嘩しながら
帰ってきた?なんだか、穏やかならぬ光景。
二人の少女が押し合い、へし合い。
狭い玄関、帰ろうとしていた私に、その押された少女がぶつかった。
押した方の子が、もう一人の子をにらみ続け、私にぶつかったことは
眼中にないようだ。
「ぶつかったら、あやまらないといけないよ。関係ない人なんだから」
と押した方の子に注意したら、彼女の目には涙があふれた。
お店の人にも、
「あやまらなきゃ、いけないよ。ごめんなさい。申し訳ありません」
と言われた。
お店の方は、店から入ってきた子供たちがお客さんに迷惑をかけたと
いうことであやまっておられた。
「いえいえ。喧嘩したらいけないよ、仲良くしないとね」
と言いながら、店を出る。
子どもが喧嘩しながら、家に帰ってくるとは穏やかでは
ないな~と思いながら、歩き始めた。
暫くして、振り返ると、さっき、目に涙をためていた少女が後ろを歩いている。
「あれ?あのお店の子じゃないの?」
と声をかけ、進む方角が同じのようだったので、しばらく一緒に歩く。
彼女は
「さっきはすみませんでした」
とさっきの形相とは全く違うおとなしい少女らしく、あやまってきた。
「いや、いいよ。どうした?」
彼女は静かに話し始めた。彼女も押し合いへし合いしてた相手の子も
さっきのお店の子供ではなく、たまたま猫がいる店で、学校帰りに
寄って猫を見ていくのが日課だったそう。
ではあるが、もう一人の子がいじめるそうで、その延長でのとっくみ
あいになっていたようだ。
いじめか・・。
今は中学一年生だそうで、いじめは小学6年のときからだそう・・・。
彼女はいじめの様子を見知らぬ私に話してくれた。
かなり深刻のよう、
学校の先生も、親御さんももちろんご存じのようで・・・。
いじめられているという子に返す言葉は難しい。
さっきは、彼女が手を出しているように見えたのだが、
逆襲だったとは・・・。
「今何歳?」
「12歳です。」
「そう、私はあなたの五倍生きてるなあ~」
「へえ???見えませーん」
「生きているといろんなことがあるから、
きっとあとで、ああいう時代もあったと思い出すときがあるから
負けないでがんばって。何かあればお母さんに相談すればいいから、
いじめられて、いじめ返すはやめて。同じレベルではいけないよ。
がんばってね、」
そういって、別れた。彼女は普通の少女であった。
いじめの話になると、涙を浮かべていた。
なんとか、なんとか仲直りできるといい。
いじめをしている側の少女のことも気になりながら・・・。
いじめ。
狭い心ではなく、広い心をもって、強い心をもって。
前を向いて生きよう。
少女の名前は このみちゃん。(仮)
どうぞ、元気に強く育ってほしい。
青春の入り口でいじめは、いけない。
お互いに理解し、許し、協力しあえる関係になってほしい。
これから、いろんな困難があるだろう。
でも、きっといいこともいっぱいある。
このみちゃんのことも気になりながら、
もう一人の少女のことも気になって・・・。
仲直りできるといい。
遠くから、5倍も長く生きているお姉ちゃんは
応援しているよ!
このみちゃん、がんばって!
ふと、50年前、自分が涙を流したときって、
どんな時だっただろう?
思い出せない少女時代の涙。
もしかしたら、しょっちゅう泣いていたのかも
しれない。
泣くごとに強くなってきたのかもしれない。