「一生懸命、生きとるんじゃ!」

酷暑。いつも歩いている道を歩くのが、しんどくなる季節。
そんなとき、ふと、母が晩年遺した言葉が蘇る。
まるで、人生劇場のセリフのように・・・。

「わしだって、一生懸命生きとるんじゃ!」

コロナ禍、自由に身動きできなくなってきて、体も弱ってきて・・・
それでも口だけは達者で、何かの拍子に、押し出すような声で
と私に向かって言い放ったあの言葉。
そのとき、それでもまだまだ元気と思って、普通に口喧嘩を
日々の恒例行事のようにしていたが、その一言で、会話がピタリ止まった。

トイレに行くのもままならぬ、時間がかかる。
いろんなことが、わからなくなりかけている。
それでもしっかりせねばと自分を律し、
人に迷惑をかけないように。と思うけれども、だんだん自分のことが
できなくなって・・・。
そんな変化を一番情けなく思っていたのは、本人だろう。
それでも、母は母なりに、
一生懸命生きていた。確かにそうだ。

この酷暑の夏が近づくと、この季節こそが心配と毎日毎日
気になって、道で、家で倒れていないかと思っていた頃から
月日は経って、今はその心配はなくなってしまった。
心配の日々はしんどかったが、もっとしんどかったのは、母本人だった
だろう。

いろんな場面を思い出すと、私は母にとってベストな行動をとり続けた
だろうか?そうではないと、今ごろになって、申し訳なかったという
気持も沸いてくる。
一生懸命、生きていたんやね。そうやね。本当にそうやったね。

酷暑に季節のバトンを渡すように、
枯れていくあじさいをみながら、母の言葉を辿る時間。
あじさいを母に重ねているのか・・・。

そう、一生懸命、生きていたね。

ふるさとで一番好きな景色は、あの頃と変わらず、どの季節でもやはり美しい。
猛暑でも、酷暑でも、一生懸命、生きなきゃね!

さあ、今日のコンサートも一生懸命!がんばろう!

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