長崎に初めて足を運んだのは、農業青年の勉強会がきっかけで、
もう十数年前のこと。
そのとき偶然立ち寄ったカステラ屋さんとの出会いが、今に
いたっている。
気が付けば、長崎の親戚ぐらいの気持ちで、心あたたかい
おつきあいを続けさせていただいている。
そのお店は、本店のみで製造販売をしており、あとはグラバー
邸のカフェや、大浦天主堂下の店舗近くで営業する近隣のカフェ
での商品提供をするほか、あとは長崎県のECサイトへの掲載と
いった感じで、地道に営業を行っている。
華やかに宣伝活動をしていないところが、私としては大変気に
入っているところ。代々、職人の技を大切に誠実にモノづくりを
されている点が、本当に素晴らしいと思う。
どの方にここのカステラを勧めても、「ここのが一番美味しい!」
と言われる。なぜか自分までうれしくなる。
さて、店内は昔ながらの立派なショーケースにカステラ商品のバ
リエーションが並んでいるが、私が気に入っているのが壁面に
掲げてあるこのイラスト。
当店のラッピングペーパーにも採用されているものである。
なんとも、南蛮文化の香りが伝わる1枚だ。長崎に異国の人たちが
訪ねてきた時代をイメージさせてくれる。
長崎に渡来した人たちのおしゃべりの声が聞こえてきそうだ。
この絵を見ると、さまざまな歴史をもつ長崎の楽しい面が
浮かびあがる。
聞いてみると、地元の幼稚園の先生をされていた方が描かれた
のだという。まだこういったイラストが主流ではなかった
時代に描かれたそうで、なんともノスタルジー漂う1枚であり
私はこの絵がとても好きだ。
悲しみと苦しみの歴史があって、一方、楽しさや美味しさの歴史
もあって・・・。
悲喜こもごも、なんとも味わい深い長崎・・・。
久しぶりにこのイラストを見ていたら、横に掲示されている
表彰状に目がいった。
なんとまあ、佐藤栄作の名前がある。約60年前の表彰状だ。
すごい賞状だ。日本の経済が発展をはじめる頃のものだ。
先代が努力されてきた味づくりを、今も誠実に守り抜いている。
時代が変わっても、普遍なるものとは?
世界と自分とのかかわりは?
長崎にはそれらのことをしっかり考えさせてくれる、
動機のツールが無数にある。
これからも、このお店を、そして、この町で頑張る人たちも
末永く応援していきたい。