神楽坂に住んでいた頃から、ずっと同じ歯医者に通っている。
ご近所さんであったため、やはり離れがたい気持が強く、
また信頼できる先生であるため、出張の合間を見て、
通い続けている。
院内に流れる音楽が気になっていて、もしかしたら音楽
がお好きかも?と思い、
「よろしければ・・・私の新作です」といってアルバムを
渡して帰ってきた前回の訪問から1か月。
聴いてもらえたかな・・・と心配もしながら、
医院のドアを開けて中に入ると、ボリュームは小さいが
しっかり聴こえる自分が弾いているピアソラ・・・。
へ?まさか院内で流してもらっているの?
恥ずかしいような、急にドキドキしてしまい、
「こんにちは。あのー、CD流してもらってるんですか?」
「はい、聴かせてもらっています。いいですね~」
とスタッフの方に言われる。
へえ?歯医者で自分の音楽が流れるとは・・・。
確かに、今は、岐阜のデイサービスで毎日流していただいて
いることは認識していて、お年寄りのみなさんが聴いて
くださってとてもありがたいが、歯医者で流していただく
とは夢にも思っていなかった。
やはり、自分の演奏のアラが自分では気になるため、
恥ずかしい気持が先に立つ。
待合室から診察室に入ってもずっと自分の作品が流れている。
とても不思議な感覚だ。
他の音楽より自分の演奏が聞こえている方が、そっちに意識がいって
いつもよりも、痛みを感じない。
30分ほどでクリーニングや治療が終わる、まだ流れている。
「あのー、歌って、ピアノも同時に弾いているんですよね。
立ってですよね?じゃないと声出ないですよね」
と、こんな質問を先生にされ、よくお分かりだなと感心する。
「先生、自分の音楽が痛みを和らげてくれるという経験は
生まれて初めてです。不思議な感じですが、ありがとうございます」
と言ったら、先生も笑っておられた。
医者で聴く、マイミュージック。
自分が聴くのと、他の方が聴かれるのとはきっと違った感じ
であろうが、なんとも幸せな気持ちになれた。
歯医者で、治療に耐える?患者さんや治療に専念される先生や
スタッフの方の癒しになれるならば、こんなうれしいことは
ない。
新作といわず、神楽坂時代につくったバックナンバーも持参
すると約束。
わが作品に送られて、歯医者を後にした。
何とも言えない、しあわせな気分。
歯医者で、マイミュージック。新発見。また世界が広がった。
痛みが和らぐマイミュージック
カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク