思わず声をかけたくなる瞬間。

株主総会のシーズンとなった。各企業とも緊張感をもって
取り組んでおられることと思う。
ある企業の総会に出向いた。
ここのところ、毎年足を運んでいるが、今年はとくにどう
してもトップに聞いてみたいことがあった。
株主とは企業の大切なステイクホルダーであるといっても、
なかなか声を届ける機会はない。そんななか、総会の参加
や、質疑応答は貴重な機会。熱心な投資家の皆さんも質問
を用意して、参加されている。
議案の説明などを終え、予定どおり質疑応答の時間に。最
初はなかなか手が挙がらない。かといって、自分が最初の
質問だと、ちょっとどうか?
質問には順番もある。すると、とある株主さんが先に質問を
された。
そのあと、挙手をして指名を受け、聴きたいことを説明した。
すると、議長である社長は、一言一言しっかり耳を傾け、頷
きながら、聴いておられ、質問が終わると、まずは「重い質
問をありがとうございます」と言いながら、質問への答えに
ついて、考えを丁寧に述べられた。
質問をすることで変わらないことも多いが、市場のうけとめ
方を知ってもらうこと、直接伝えること・・これは今後の企
業経営にも大切である。

とにかく、議長は丁寧に答えてくださった。伝えたい意図は
伝わったようだ。
その後、どんな質問でもいいのだという空気になったのか、
多くの挙手があり、1時間半あまり質疑応答が続いた。
丁寧に対応されるその議長の采配ぶりに、次第に感動して
いく自分がいた。
株主はこういった議長のリーダーシップや、そこから指示を
受けて説明をされる役員たちの姿勢、言動に注視する。
問題があったことについては真摯にお詫びをし、そして感謝
を伝え、丁寧に説明をし、しっかり聴く。
株主総会とは上場企業にとって、改めて重要なステイクホル
ダーとの貴重なコミュニケーションの機会でもあると、再実
感した。

閉会の挨拶が終わった後、檀上の役員たちはみなさん、退席
されず、そのまま残って株主たちが退席するのを見送られた。
そして、社長は閉会の挨拶後、役員の誰よりも長く深く頭を
下げ、感謝の気持ちを示しておられた。

もちろん面識はない議長であるが、質問に対して丁寧に答え
てくださったことへどうしてもお礼を言いたくなって、帰り
際、ステージの前に行き、社長に頭を下げた。さっき質問
した一人であったか認識されていたかわからないが、
今日、伺った甲斐がありましたよ。という気持ちを伝えた
かったのだ。

と、こんな風にその企業のファンになっていく。それだけ
経営者の姿勢や一言一言が大切であることを改めて学んだ。

これから各企業で総会が続く。
いろんな株主がおられるが、心から応援してくださる株主と
出会え、長く応援していただけるきっかけになる貴重なコミ
ュニケーションの機会である。
改めて、謙虚に感謝の気持ちとともに、共感されるメッセー
ジを届けていただきたい。

帰り道、同じ質問をしようと思ってきた・・という方に
声をかけられ、会話が弾んだ。同じ企業を応援する仲間
同士との出会いもあるのだ。

改めて、株主がステイクホルダーであることの誇りをもてる
そんな企業であり続けることの大切さを学ぶ1日となった。



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