日々いろんな出会いをいただく。
この仕事の一番の歓びは、日々変化にとんだ人との出会い、
コミュニケーション、交流、学び・・・。
何もない日は1日たりともない。
ある会社の社員面談を続けている。
管理職から一般職にいたるまで・・・。
ある男性社員と面談した。
障がいをもたれており、歩行や動作、会話にも支障がある。
しっかり話しを聴きたいと思い、会話をはじめる。
その方はゆっくりゆっくり、体内から絞り出されるような声で
自分の言葉を発してくださる。
一言一言を聞き洩らさないように、こちらも集中する。
少し話せば、そのスピードにも慣れてくる。
お聞きすると、その会社ですでに30年以上勤務されているとのこと。
同じ職場でこんなに長くつとめることができるとは、ご本人の努力と忍耐は
もちろんであるが、周囲の応援と協力があってのことである。
この方との会話を通じて、障害をもつ方を長く雇用し続けている会社に対して
尊敬の念が湧いてきた。
今でこそ、SDGsだ、共生だ、インクルーシブだと言い、障害をもつ方々の
社会参加も進んでいるが、30年以上前から地道に取り組んでいる会社もあるのだ。
その方は介護離職の話もされた。
これからは自分が年老いた父親の介護もしなければならない。だからいずれ仕事も・・。
障がいがあっても、親の介護の心配をされている。
とそんなことも考えておられる様子に心うたれた。
そうだ、親の介護は他人事ではない。障がいがなくても、大変なことなのに・・・。
家族の話をするとき、目から涙があふれた。
いろんな悲しみや憂いや、やるせない気持がこぼれたのだと思った。
思うように動けない、ひとりでいろんなことができない自分へのもどかしさを
抱えながら生きてこられている・・。
「自分は弱いんです・・・」
絞り出すように何度も言われたその言葉に、
「弱くないですよ。30年以上も同じ会社につとめることができるなんて、
強さがなかったらできないですよ」
とくり返す。
障がいをもって生きることの大変さ。
これは、その本人にならないと、家族でないとわからない。
いろいろあっても、周囲に支えられて日々生きる、はたらく。
「お母さんが見守ってくれているから、元気にがんばってくださいね。
応援しています。体に気を付けて、またお話ししましょう」
最後はくしゃくしゃの笑顔で会釈。
「ありがとうございました」
絞り出すように出された言葉を、ありがたく受けとめた。
今回の面談は、私に大きな衝撃を与えた。
障がい。いつどこで誰が、何か起きるかわからない。
たまたま自分は今、元気で自由に生きさせてもらっている。
でも、明日はわからない。
どんな状態になっても、自分も強く生きられるのだろうか。
自分こそ、弱虫だろう。きっと・・・。
人様に偉そうに言っているけれど、自分だったら・・・と思ったら
なんとも言えない気持ちになってくる。
どんな状況になっても、周囲の助けを得ながら、生きていけるのだろうか。
生きていく。生きる。しんどくても生きる。
涙であふれたその人の目は、きらきらと光り、生きているんだ、生きているんだと
私に訴えているようであった。
改めて、自分が今できることを毎日やりきること、
そして困っている方や、応援したいと思う人に寄り添って
できることをし続けること。
それをやらなければいけないと強く思った。
今回お会いした社員さんの上司は、その人の力や性格もわかった上で
真正面からおつきあいされている。体をはって・・・。
素晴らしい上司だ。
一緒にがんばろう!とその人に日々伝えておられるのだろう。
助けあって生きる。
生きていると、自分なんか・・・と思って命を絶ちたくなることも
あるだろう。
でも、生きている。周囲の応援があったら、がんばれる。と信じたい。
なんだかこちらが大きな力と教訓をいただいた・・・。そんなひととき。
一晩たっても、その人の涙にまみれた瞳がずっと心に焼き付いている。
どうか、元気にがんばってください!お母さんも見守っておられますから!
応援しています!