好きな店がなくなるのは、まるで自分が住んでいた町の一部がなくなるような
とても寂しい気持ちになるものだ。
とくに専門店や外食店で、チェーン店ではないお店の閉店はなおさら、寂しい。
もうあの味を楽しむことはできないのでは?もう店の人に会えなくなってしまう・・
など、思わず最終日に足を運びたくなる店は、これまでもあった。
コロナ禍は世界中で多くの店が閉店に追い込まれた。
あの大変な状況で営業し続けてきたお店は大したものだ。
10年以上前であるが、たまたま土曜に歩いていて見つけた神田のもつ焼き屋。
平日であれば、ビジネスマンで混み合うため、そこに分け入ることはなかった
であろうが、すいている土曜の発見は良かった。初の飛び込みから、何度も
何度も通い、いろんな人をお連れした。
店のスタッフとも仲良くなった。
「マーサさん、マーサさん」とみんなが呼んで慕ってくれることもうれしかった。
コロナ禍のときは、さすがに心配した。もう店がなくなってしまうのではとも
思った。自分にできることをし、応援を続けた。
コロナも落ち着いて、お店はコロナ前の繁盛店に戻った。
ああ、良かったと思っていたら、今度は別の理由で年内で店じまいとなった。
時代の流れのなかの閉店。経営が立ち行かないからの閉店ではない。そこは救いだ。
最後にもう一度訪ねたいと思い、神田に寄ってみた。
土曜の夕方にぶらりと立ち寄った日々を懐かしく思い出した。
この店をみつけたことで、本当にたくさんのご縁をいただいた。
神田の町も、再開発で変わっていくようだ。
昭和らしい雑然とした飲み屋の姿は消えていくのだろうか。
最後は社長や店長スタッフに見送られて、店に別れを告げた。
いい店ほど、人格をもつ。
惜しまれる店ほど、人間のようだ。
次、この界隈を訪ねるときは、町も大きく変わっているだろう。
惜しまれる店。あとわずかの営業日、多くのお客様は足を運び
数々の思い出とともに、感謝の盃をささげることだろう。
東京で好きだったお店が、ひとつひとつ、消えていく・・・。