質問がとびかう。

今年も、株主総会が行われる季節となった。
ある上場企業の総会に参加をしてみた。
その企業はV字回復をされ業績も好調であるため、スムーズに決議が進み、
短時間で終わると思っていたが、企業側の報告を受けた後の質問時間
が意外にも長かった。手を挙げる人が途切れなかったのだ。

同じ企業の総会へは、コロナ禍にも出向いたことがあったが、
そのときは、人数制限もあり、会場も自社内。
今回は登壇者はマスクなしのコロナ前と同じ状態。
会場も大勢が参加できるようにとコロナ前と同じく、ホテルでの
開催となったため、何百人もの株主が駆けつけた。

業績が良くても質問がたくさん出るのだ。
むしろ、新しいことを手掛けると、そのことへの質問も出る。
この企業のことをもっと知りたいという気持ちになるのだろう。
さらにもっと業績をあげてほしい、株価をあげてほしいと
株主の期待も高まり、挙手される方が続く。
気が付けば総会開始から1時間半以上経過しても、質問は
続く。

遠方から来られた方、あらかじめホームページで最新の企業情報を
勉強してこられた方、日頃からその企業の店舗を利用していての
感想意見をどうしても言いたい!と思いを持ってこられている方。
一人の顧客としてのご意見・質問をされる方から、いかにも投資家らしい
専門的な質問をされる方まで、幅広い。
質問を聞いていると、株主の属性も見えてくる。
他の株主も、長時間にわたる質疑をしっかり聞かれたり、メモを
とられている方もおられ、熱心な株主が多い企業だと感心もする。

質問はあらかじめ考えてこられた方から、その場で浮かんだことを
お話しになる方までいろいろ。
話し慣れているビジネス経験がおありの方から、こういう場に慣れて
いない方まで・・・。初参加の方が多かったのは、コロナも落ち着いて
きたからか、業績も良くさらに次の話を聞きたいと思われたからか・・。

何百人もの前で、手を挙げて質問をするということは大変勇気がいる。
質問力も必要だ。簡潔にわかりやすく話せねばいけない。緊張する瞬間だ。
原稿を書いて臨めば良いが、そういう方は少ないと思う。
ある株主さんは声を震わせ、大変緊張されながらも、聞きたいことを
一生懸命に尋ねられ、議長や担当役員さんもそれにしっかり答えた。
その答えにうなづき、納得された様子。
自分で直接聞いてきた。という体験こそが、その株主さんにとって
重要であると改めて感じた。
さらに、この企業を応援しようと思うきっかけになる。
熱心な株主さんの質問を聞きながら、じゃ、自分も聞いてみようかと
思った方も多かったのではないか。
2時間弱の総会時間。
一緒にこの企業を応援しようという機運が静かに高まっていったのを
感じた。

質が高い株主が応援する企業。責任と期待が高まるなかの経営は
本当に大変であると思うが、応援されてこそ存在意義がある。

この季節。まだまだ総会が続く。
どちらの企業でも、自社を支える株主との充実したやりとりが
なされ、さらに信頼と期待を寄せられる関係づくりが育まれることを
期待する。

質問には勉強が必要。そして、答えには誠意とわかりやすさが必要。
今回の総会、なかなか聴きごたえがあり、学びも多かった。

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