同級生から飛んできた餅。

三年ぶりの地元のまつり。近所の神社で年男たちが餅をまく。
この一大イベントの前には、その年男の皆さんと地元の男性たちによる、恒例の神事があるが、そのときは人もまばら、しかも雨模様・・。
であったが、餅まきの時間は、回覧板などで情報がいきわたっているのだろう、その時刻が近づくにつれ、人が湧いてくるように集まってきた。
待ってましたという感じで、みなさん袋を持参。やる気満々で、驚く。

櫓の上には立派な餅が入った樽。紅白の餅がきれいに並べられている。年男たちの奉納によるありがたい餅。この「餅まき」の風習は江戸時代からあるようであり、各地域でいろんな形で受け継がれているようだ。私の地元でも、ずっと続いているが、コロナで休止、今年は久しぶりの開催となった。
爆竹が鳴り、花火が打ち上げられると、一斉に年男によって、紅白の餅が次々と撒かれ、集まった人々はその餅を受ける、拾う・・・。家族や友達の方に向かって多く投げたり、声をかけられたらそっちに向かって投げたり・・・。野球をやっている人には有利なゲームでもある。
この伝統的な地域のまつり。約半世紀ぶりに見たこの光景。
爆竹や花火の音が聞こえたとき、また櫓の上に上った年男の皆さんの姿や櫓の下で働く地元のおじさんたちの姿が見えたとき、父の元気だったころ、威勢の良かった頃の様子がくっきりと浮かんで、ぐっときた。
ああ、父も母も祭りが好きだった。地元の人と交流するのが好きだった。とくに父は祭り
になるとお酒を飲んで、気が大きくなって、翌日母に怒られていた・・・。そんなことも
思い出し、この賑わいのなか、ひとりで涙ぐみ、餅を拾うこともなく、たちすくみ・・すると餅が降ってきて、体に当たった。餅って痛いんだ~。

餅をまいていた年男の中には、同級生が何人かいた。
本当に50年近く会っていない人もいて、
声をかけることができなかったけれど、

「すっかり、いいおじさんになったんだ~」
どこかで会っても絶対にわからないなあ。
と地元に残り、地元とともに暮らす彼らのことを懐かしく、見守った。

今も昔も神事は、男のまつり。地元に残った男たちが地元を守る。
と、そんな歴史である。
代々受け継がれた伝統的な祭りを含め、さまざまな活動をその男たちが
地元に残って受け継がれていることは本当に素晴らしいと思う。
地域には地域の歴史があり、まつり、ならわしがある。
半世紀たっても ベタなこの祭りを楽しく参加する人々たちの興奮は変わらない。
すべて父も含めた、地元に生きた人たちのおかげである。

少しキャッチした餅をそのまま、妹に渡しにいこうと電車に乗った。

同級生たちが、地元を守っている。
ヨソモノの自分は何を守ってきたのかな?
いろんな思いで、この光景を焼き付けた。
みなさんが健康で、平和な1年を過ごせますように。

いやはや、それにしても、久しぶりに降ってきた餅は痛かった。

カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク