大きな駅には、改札内にいくつもの飲食店が併設されている例も
多い。回転寿司、ベーカリーカフェ、そして立ち飲みスタイルのバーなど。
電車の待合時間にちょっと立ち寄って、腹ごなしをしたり、のどの渇きをいやしたり・・・。
東京駅も近年、大掛かりなリニューアルをしてさらにエキナカのお店が増えたし、
最近、久しぶりに新大阪駅を利用して、こちらの変貌ぶりに驚いた。
頻繁に利用していた30代の頃の何倍にも店舗が増えている印象だ。
週末は大変な賑わい。さすがの大都会だ。
混雑した駅、店ではその店の様子を横目で見ながら、通りすぎるだけ。
でも、駅や時間帯によっては、駅自体の利用者もほどほど。お店もガラガラだったりする。
街中は人であふれていても、駅は多くの人を送り出し、また迎え入れるまでの時間は
ちょっとゆったりしている。16時から17時の間は、駅のアイドルタイムか?
こんな時間帯が好きだ。
たまたま出発時間まで30分以上あった私は、前から気になっていた立ち飲み屋の
前を通った。カウンターと立ち飲みテーブルがあるバール。
端の席が空いている。あ、あそこなら、荷物があってもそのまま入ることができそう。
さらに、コロナ対策で、カウンターに仕切りがあるため、ひとりであっても隣の
人を気にせずいられそうだ。
ということで、そのお店に入る。
その日は、仕事で声を出しすぎたせいか、のどが渇いており、迷わず生ビールをオーダー。
樽から注がれたビールは本当においしい1一口目は、テレビコマーシャルでよく見るような
飲みっぷりになる。
私はグラス一杯のビールをゆっくりゆっくり味わいながら、店内を観察する。
その店のお酒の品ぞろえに目が行く。お酒の瓶トラベルは見ているだけで楽しい。
ああ、ここはウィスキーが得意な店。まるでホテルのバーのようにウィスキーは
揃っているな~。と駅のバールなのに、かなり本格的な点に注意がいく。
そのあと、カウンター越しに仕事をするスタッフたちの動きが目と耳に入ってくる。
狭いカウンターに店長、しっかりした先輩スタッフ、そして新人のようなスタッフ。
この三人の掛け合い、仕事の教え方、教わり方などが全部見えて、会話も聞こえる。
スマホを見る時間よりも、接客の表裏が見えるリアルなカウンター劇を鑑賞する方が
断然面白く、勉強になる。
「ああ、先輩、一生懸命教えているなあ。ああ、そうやって教えるんだ~」
「あ、常連さんのようなお客さんにポイント会員すすめているな~。」
「あの子が店長?でも、若すぎるよな~」
とひとりであれこれイマジネーションを働かせる。
すべての言動が聞こえ、相手の反応も見えるので、コミュニケーションの勉強にもなる。
立ち飲み屋の良さは、ぶらり入って、気負わず一杯だけでも楽しめること。
ひとりでも楽しめること。余計な気遣い、会話をしなくてよいこと。
そしてお店のスタッフとの距離が短く、人と場合によっては予期せぬコミュニケーションが
楽しめること・・・。
実は世界のバーは好きで、コロナ前に行ったパリの北駅でも今回と同じように、待合時間
に利用したことを、ふと思い出す。忙しく接客をするスタッフの働きぶりを見ながら、
少しだけ交わした会話。これが旅の記念になっていたりする。
そして今回の立ち飲み屋でも、気が付けば
スタッフとしっかり会話していた。
こちらのお店の店長、なんと25歳であった。
「若いのに、しっかりしているね~。25歳なのに、もうバーの店長?
学生時代、何を勉強していたの?」
「僕は、心理学を勉強してきたんです。なので、人とのコミュニケーションが
面白いと思ってこの仕事しています。」
名刺を渡しながら、こんな風に語ってくれた。
「いいね~。お酒とコミュニケーションは関係あるね」
「そういってもらえると嬉しいです。」
と、まあ、こんな会話ができるのが立ち飲みの良さ。
ビール一杯とドライフーズでお会計。
安い!そして、疲れもとれ、大満足。
「また寄るね。元気にがんばって~」
と店を出るとき、エールを送る。
お客さんがいなかったためスタッフ全員笑顔で送り出してくれた。
アイドルタイムの駅の立ち飲み。
若いスタッフたちとの会話が楽しく、ちょっとしたハレの時間。
最近は電車の待合時間を楽しむのが、ちょっとした楽しみ。
駅は旅の交差点だ。
ひとりで、お金もかけず、心豊かになれる。
これからも、元気な限り、小さな旅を続けるとしよう。
立ち飲みの楽しみ方。
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