さすがの筆談コミュニケーション。

新幹線の中で仕事をする人も多い。
貴重な移動時間だ。
私もかつては、よく新幹線に乗ってすぐパソコンを開いて
忘れないうちに・・・と報告書を作成したりしていた。
しかし、揺れる社内での入力は体にも良くないので、
最近は、意識してやらないことにして、むしろ、休息、
睡眠の時間として活用している。

そんな時間にしたいのに、前の席で、かちゃかちゃと
キーボードを強くたたく音が続く。
おそらく、その人は東京に着くまでに早くやって、
会社にメールするのか何かしたいのだろう。と
想像できるほど、力が入った速いパンチングの音。
その音が鳴り響く。困ったなあ。うるさいなあ。
周囲の人は、イヤホンをして他の音を聴いているか
すでに眠っている人もいるが、こちらは眠れない。
私もイヤホンをしてみたが、それでも聞こえてくる。
ふと大きめの付箋メモがあったので、メッセージを書いて
ご本人にそっと渡そうかと思ったが、知らない人だ。
相手によっては事件に発展することもないとはいえず、
席を離れて、車掌さんを探す。
すると車掌さんではなく、警備の方をみつける。
「あの、すいません・・。車掌さんが見当たらないので
お伝えいただきたいんですけど・・・。〇両目の〇に
座っているものですが、前の方のキーボードの音が大きすぎて
困っているので、車掌さんに伝えていただけますか?」
というと、警備員さんは状況を察知してすぐ動いてくれた。
席に戻ってしばらくしたら、車掌さんがやってきてそっと
メモを渡してくれた。最初、驚いた。
「音があまりにも気になるようでしたら、他の席に変わって
いただいていいですよ」と、書いてあった。
口頭では言えないことは、筆談をするという接客マニュアルが
あるのだろうか?
そして、小さな声で
「移動される場合は、忘れ物だけは気を付けてくださいね」
と付け加えられた。
私は静かに頷き、おじぎをして、少し離れたところに空席があったのを
見つけ移動した。ああ、良かった。音も聞こえなくなった。

しばらくすると、車掌さんがまた通って、今度は声をかけてくれた。
「大丈夫ですか?問題なかったですか?」
「いやー、大変助かりました。ありがとうございます」
こちらも普通にお礼が言えた。

車内ではいろんなことが起きうる。トラブル、事件、事故も多い。
何か起きるかわからないことを想定し、安心安全な運行を目指し
がんばっておられる輸送関係の皆様さまには、頭が下がる。

新幹線に関するエピソードはいろいろあれど、筆談は初めて
であった。
状況に応じたコミュニケーションの手法、ツールの使い分け。
その細やかな配慮に感動し、感謝した朝。
もちろんトラブルはない方が良いけれど、それ以上に
いいサービスに出会えたことが、とても良かった。

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