平和新聞なるもの。

長崎という町は、私にとって発見や感動が尽きない、永遠の学び舎だ。
歴史的、文化的遺産も大変豊かで、和蘭華(日本・オランダ・中国)の
ちゃんぽん文化は世界でもここしかなく、唯一無二の味わいがある。
とくに中国文化のなごりは健在で、まさに今は春節(ランタンまつり)
の準備で町が盛り上がっている。今週末からスタートのようだ。
まるで、ここは日本ではないような不思議な感覚になる。
この祭りの中心のひとつは、唐人居住区跡。
江戸時代、鎖国政策のひとつとして長崎に住む中国人の居住区を決めた
エリアのことで、今も住宅街のなかに中国文化の名残が残っている。
たまたまそこを通りがかったら、1軒のパン屋の存在に気づく。
その店先に貼ってあった手書きの小さな新聞が目に飛び込んできて、
思わず足を止めた。手作りの新聞。フランスパンをはじめてつくったお店?
お店の歴史が書いてある。これは、子供たちの文字だ。
「平和新聞」と書いてあるところに、いたく感動した。
この新聞記事を読んで、そのお店に入ってみた。
「いい新聞が貼ってありますね。あれを読んで、入ってみました。」
「そうなんですね。近所の小学生たちが作ってくれたものです。」
お店の人が笑顔で親切に答えてくれる。まさにパンの種類も、懐かしい
昭和の匂い。とくにカステラサンドはルーツであろうか?
とにかく、その子供たちが新聞のおかげで、しっかりパンを購入。

平和新聞。これは、被爆経験を有する長崎だからこそ生まれた
新聞だろう。日々のさりげない話題、ニュースこそ、平和の証しだ。
世の新聞が発信する話題は、非日常のネタが多く、平和とはかけ離れた
悲惨で悲しい内容も少なくない・・。
そんななか、長崎の子供たちがつくる「平和新聞」は、ほんとうに
素晴らしい取り組み、教材であると実感した。
DX時代とは、無縁の手書きの手作り感満載の1枚の新聞。
子どもたちがお店を取材し、書き、お店に貼ってもらっている・・・。
平和を願う長崎のみなさんの想いを、この1枚からも感じる。
またお気に入りの店が増えた。

平和新聞は、長崎発の素晴らしいコミュニケーションツールだ。
平和を学ぶ。平和を意識する。
この町を訪ねると、改めて背筋が伸びる。

長崎の悲喜こもごもの豊かな歴史から、学ぶことはまだまだ多い。
世界の平和を願い、素晴らしいランタン祭りになりますように。

※以下の写真からは、
写り込んで新聞の中身は解読できないと思いますが、その存在感だけお伝えしたく・・・。


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