耳が覚えている!

経験から育まれる、人間の能力とは、本当にすごいと思う。
最近、時々それを実感する。

18歳で一度音楽の世界を捨て、35歳まで、ろくにピアノを弾いていなかったのに、
3歳から習っていたせいか、子供時代に弾いた曲は楽譜がなくても弾ける。
歌詞は覚えていなくても、メロディや伴奏はすらすら弾ける。
このことを、35歳で音楽を再開したとき、われながら驚いた。

やっぱり、幼き頃からの練習・経験で得た力と言うのは、生涯通じるものだと。
子供の頃の学習の力は、無限大。

最近、無性に弾きたい曲が頭に浮かんできた。
昔、人気のテレビドラマ「赤いシリーズ」でも登場した、あの名曲、
ショパンの「英雄ポロネーズ」。かっこいい。
そのドラマでは、水谷豊が弾いていただろうか?記憶は定かではないが。
小学生の自分にはもちろん弾けない、憧れの曲であった。
ああ、いつか弾けたらいいな~。・・・と、夢は頓挫。
でも、40年余り、どこかで何度も何度も聴いていた。

久しぶりにその楽譜を引っ張り出す。
もともと、ほとんど弾けなかったし、弾いていなかったのに、
楽譜を見て、指が動き出す。
指先はスムーズではないが、次はこうなる、ああなる。となぜかわかって
指が進むのだ。
長年、聴き続けてきたため、楽譜が読める、先に進める。
曲を覚えているのだ。
耳の経験も、大切であると改めて実感。

とはいえ、難しい曲はそうカンタンに弾けない。指が動かない。
バレリーナと同じく、ピアニストも練習を1日さぼったら、
とりかえすのに倍の時間がかかる。と言われ続けてきた・・。
いかに練習の積み重ねが大切か・・・と教えられたのに
17年の空白の時間があったわが音楽人生。
この代償は大きいが、まあ他のことに費やしたその時間は
無駄にはなってはいない。と自分で言い訳をする。

これからでも、遅くはない。
耳が覚えていることに感謝し、指先をもっと鍛える。
人間の能力は、鍛えるほどに身になる。ますます力がつく。
弾けば良いのではなく、音楽をひとつのメッセージをして
表現したい。そのことはこれからでも、充分にできると
確信している。

耳と脳の関係。改めて興味深い。
人間の力。その気になれば、元気でさえあれば、
いくつになっても無限大。

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