ふたりで出かけた海へ。

10月になってしまった。
オクトーバーフェストなど、コロナ禍を乗り越えて秋祭りの季節。

10月はまさに恵みのシーズンであるが、私にとっては
それとはまた違う思いも、かみしめるとき。

10月はもともと父の誕生月であったが、
なんと同じ月、誕生日の二週間前に亡くなってしまった。

あと2週間で、1周忌となる。
今年の10月は、心して過ごし、1日1日をかみしめ、
大切にしなければいけない・・・そんな気持ちだ。

夏以降、10月になったら・・と思っていたことがある。
父がまだ元気だった頃、ふたりで出かけた最初で最後の旅先に
足を運んでみようと思っている。
車の免許を返納したあと、さびしそうにしていた父を誘って
出かけた旅。思えば、父とふたりでの旅は初めてのことだった。
当時、私はまだ東京に住んでいたが、岐阜まで父を迎えに行き、出かけた。

まだお酒を飲めた父。まだ歩けた父。ちょっとふらついていたけれど・・。
「元気元気、まだ歩ける。がんばって!」と、
父に無茶を言って、ふたりで海沿いに島を歩いた時間が蘇る。

ふたりで1泊の旅をするなんて、まさかそんな人生の1ページが、
一番の宝に、思い出になるとは、当時はそんなことはまさか思ってもいなかったが・・。

今、とても父に会いたい。
だから、そこに行ってみようと思っている。

父との1泊2日の知多半島の旅。その最後は、
名鉄の名古屋駅での別れ。岐阜行の特急電車に乗る父の後ろ姿。
その瞬間までしっかり覚えている。
父へのプチ親孝行もどき。電車に乗るとき、父はうれし泣きをしていた。
そのことを今、鮮明に思い出す。

と、10月になるというだけで、そんなことを思い出す。
10月は、オクトーバードロップ。ドロップは涙。
心にハンカチをもって、出かけよう。
海風に触れると、悲しみもやさしく海に溶けそうだ。

人生を迎え、送る季節。





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