マーチンさんからの贈り物

両親の旅立ちは、実に思いがけない新たな出会いにつながっている。
地元の米屋さんは両親の親友であったため、今も母の代わりにはならないが、
顔を出し、女将さんが元気かどうか確かめに行くのも大切なお仕事となった。
その店では、コメだけではなく、味噌や野菜、飲料、麺類、お菓子、野菜、
お彼岸となればお参り用の花まで・・。
まさに地域のコンビニとして地元に愛され続けている。
そこで販売されている味噌は、まさに超地元の味噌醸造所のもの。
わが家でも、子供のころからそこの味噌を使っていたため、店でみつけた時には懐かしく
気が付けば、そこの味噌製品をよく購入し、自分でも使うが、
県外の方へのお土産としてもよく使うようになった。

その味噌が、県外の方にとても好評であるので、つい嬉しく、
またその地域密着の様子が大変気になって、
そこの社長にコンタクトし、会社まで会いに行くことにした。
実は、以前から岐阜の土産物の開発にも意欲的であり、また食育活動にも熱心である
という情報は見聞きしていたので、大変興味があったが、やっと面談が叶ったわけだ。

子供の頃から、もちろん存じ上げている味噌屋さんであるが、なんと現在の社長さんは
40代半ば。私より一回り以上若い。小学校・中学校の後輩にあたる。
外食での経験もあるようで、サービス精神にもあふれ、とても気持ち良い、礼儀も品も
そして、感謝の気持ちが全身からにじみ出ている素晴らしい経営者であり、とても感動した。私は18歳で地元を出てしまったため、その人との交流はまったくなかったわけだ。
会話が弾みはじめたころ、社長夫人が、あたたかいココアをふるまってくださって、
そのあと、写真のものを持ってこられた。
私は、パッと見せられたとき、
「ショコラティエが作ったチョコレートかな?へ?高級そう」
と瞬間思ったのであるが、なんと、これは岐阜県産大豆をつかった、
自社製味噌による「みそ玉」なるもの。
「みそ玉」は聞いたことがあるが、こんなおしゃれな素敵なもの
とは知らなかった。そしてトッピングは野菜。
説明を聞きながら、もっとも感動したのは、
「紫のお洋服を着てこられたので、紫のみそだまも入れてみました」
とのこと。へえ?来社するお客の服装の色まで見て、それでお土産を・・・。
粋すぎて、言葉にならない。
どうやら、非売品。特別すぎて、いただくのがもったいない。
そこには、手書きで書かれた「みそ玉の召し上がり方」、会社のリーフレットも。
さすが、しっかりされている!
とにかく、自分が一度は捨てたふるさとで、ずっと家業を守り、そして新たな挑戦を
している企業が、今もここ!にあることがとてもうれしかった。

実は、最近知ったのであるが、生前会ったことがなかった、祖父。(父の父)
この会社でお世話になっていたそうで、今回確認したら、
その事実も明らかになった。
「あの時代は、従業員さん同士あだ名で呼び合っていたようで、『マーチンさん』と
呼ばれておられたそうですよ」
と、社長が教えてくださり、胸が熱くなった。
交通事故で亡くなってからの悲しい話しか聞いたことがなかった
祖父の生前のことを、今このように知るとは、
まるでアナザー ヒストリーのようだ・・・。
一度も会ったことのない、祖父が笑っているように思えた。

そうか、これは、
マーチンさんからのギフトなのかもしれない。味噌は美祖?

今、このような出会いを大切に、自分が外で仕込んできたさまざまな事が少しでも
お役に立てればと思っている。
この味噌屋さんの名は、芋慶さん。地元が誇る素晴らしい百年企業だ。

http://www.ccom.or.jp/imokei/imokei.html

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