気持ちが沸きあがる瞬間と歴史。

連日エリザベス女王のご逝去から、葬儀に向けての道のりが報道されている。
なぜか見るたびに、目を奪われ、心も留まる。
もし、今、英国にいたら、と想像もする。

海を越えた日本でも、リアルにこの場を見聞きすることができる。
大英帝国を築き、かつて世界を支配した英国の伝統に触れながら、
その国の歴史を知るきっかけにもなる。
いざというときのために、準備されてきたとも思える完ぺきなセレモニー。
まさかそんな日が。でもやはり来てしまうのだ。
そんな思いを、見守る人々が抱いているだろう。

昼夜を問わず、どこでも長蛇の列。世代を超えて、一目、女王様にお別れをしたい
という純粋な国民の気持ちが、こちらにまで伝わってくる。
拠点を移動しながら、本拠地であるロンドンのバッキンガム宮殿へ到着。
そして斎場までの厳かな移動の様子を見ると、なぜかこちらも胸がいっぱいになってくる。
結婚式など華やかな場面とはまた違う、荘厳さを感じる。

ほとんどの人が女王様に直接会ったことがなく、メディアでしか接していないはずなのに
この盛り上がりは、一体なんだろうと思う。
これは70年ぶりの国の出来事であり、国で最も大切な存在への感謝と祈りの儀式。
これが、まさに歴史的瞬間なのだと思う。
国葬と言う名にふさわしい雰囲気が、じんと伝わってくる。
まさに、お人柄や功績があってのこの盛り上がり。
こんなにも多くの人々に惜しまれて人生の幕を閉じるとは、
ほんとうに幸福な人生であるとも思え、祈りとともに拍手を送りたくなる。

気持ちというのは、正直だと思う。
自然と湧き上がってくるのだ。
一緒に送りたい、会いたい、感謝を伝えたい。お別れを言いたい・・・。
ひとりで悲しんでいるのが嫌だから、出かけてきたという人のインタビューも
印象的だった。

棺の移動を見ながら、いろんなことを思う。
人はそれぞれに思うだろう。いろんな人生を重ねているかもと思う。
私の場合は、ふと、自分の母親のことと重なった。
もちろん規模はまったく違えども、小さな世界でのあの一コマは、
本当にドラマチックであった。
悲しいけれど、感動的であった。そして今も忘れない。
かけがえのない存在を失うというこの瞬間は永遠のものだ。

今回の英国女王のセレモニー。
世界中の人々の気持ちが悲しみと感謝に包まれている。
この気持ちは、まだまだ続くだろう。
クライマックスに向け、もっと盛り上がっていくことだろう。
悲しいけれど、素晴らしいことだ。

ところで、
長蛇の列の国民の多くがスマホを持って、お見送りしているのも印象的だ。
拍手する人、祈る人、そして撮る人。夜には女王を送る灯りとしてスマホが活躍。
伝統と現代の融合。この風景も歴史の一コマに刻まれるだろう。

気持ちが沸きあがる。大切にしたい。
気持ちというのは、一番正直である。






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