運命のカップルが遺した、永遠のアート。

昨年のパリの凱旋門で開催されたアート展。
もちろん現地に行けていない。このたび、その展覧会を六本木で観ることができた。
凱旋門をラッピングするという、巨大なアート作品。
この企画を発想し、実現するまでをドラマチックに見せる展覧会。
二次元ではあるけれど、映像の力が素晴らしく、パリの現場にいるような感覚に
なることができる。

パリ祭を前に、凱旋門から伸びる放射状の道路が浮かび、この門からルーブル
に向かってLa Grande Roueが建ち、ゆっくり回転していた四半世紀前の
独立前の心境も重ねて思い出す。
パリは、自分にとって独立の背中を押した町。
そんな思いが募るメモリアルな場所で、こんな大胆な挑戦を手がけた夫妻がいた。

世界的に知られる環境アーチストのクリストと、ジャンヌ クロード。
二人はまさに同じときにこの世に生を受けた運命のカップル。(誕生年、月日が同じ)
出会ったということは、何か同じことをする。やり遂げるという使命感が二人には
あったのだろう。そのために生まれてきたのだ・・という強い信念、確信も含めて。
そして、実際この二人は、とてつもない作品を世の中に次々と誕生された。

それがラッピングアート。
町や建造物を覆ってしまうのだ。
実は20年ほど前に、このクリストの作品を撮影したポスターを東京在住のアーチスト夫妻からいただいたことがあり、この作家を始めて知った。「大空間を覆ってしまうなんて、変わっているな~。何の意味があるのかな」と思いながらも、その発想と実現力に感動していた。パリのポンヌフやニューヨークでの実験はインパクトがあったし、ドイツの議事堂ラッピングも大変話題になったとのこと。

この凱旋門アートは夫婦の数十年の夢の実現であり、
そして作家亡きあとに遺言のように、コロナ禍に実現された・・という、
あまりにも特別すぎる作品。

作品自体ももちろん素晴らしいが、この夫婦がこういったアートのジャンルを開拓し、
一緒に作り上げてきたこと自体、その創造的な人生に感動、興奮した。
言葉にならないほど、ステキなカップルだ。

フランスでいえば、サルトルとボーヴォアールも素敵で知的なカップルであったらしいが、
このクリストたちも、とても素敵だ。
夫婦ってなんだろう、カップルってなんだろう。
ともに何かを創り上げることができる、何かを生み出すことができる。
なんて素敵なこと。目指したいし、憧れである。現実とはかなり違うけれど。

もう二人ともこの世にはいない。
でも、こんな素敵な活動を世界に見せてくれた二人は永遠のアーチストだ。
意味がないことを、一生懸命やること。ここに価値を感じる。
そこに宗教も政治もないところに、純粋な力を感じる。
コラボという言葉がやたら流行っているが、究極のコラボは、夫婦によって
愛とともに実現される協働なのかもしれない。
そのなかでも、作品を生み出すカップル、そういった生き様を見せてくれる
夫婦には心から拍手をおくりたい。


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