現場で汗かく姿に触れ、うるうる。

中小企業さんとのやりとりの多くは、どこかの会議室であったり、いわゆる話をするための個室で行うことが多い。そこで企業さんの悩みや課題をいろいろお聞きし、アイデアを出したり、添削をしたり、ときには大勢で話をしたり・・ということがほとんどで、その会社の現場へ足を運ぶことは多くはない。今回、ある打ち合わせもあり、企業訪問をさせていただくことになる。1件目は豆腐の製造会社だ。家族経営されている。いつもお会いしている担当者とは気ごころも知れているが、そのご家族にはお会いしたことがない。今回その担当者のお母様、お姉様にお会いすることになり、「弟さん(息子さん)すごくがんばっておられますよ」「いやー、外では活動しているんだけど、中のことももっとやってほしいんですけどなかなか・・ですわ」と笑いながらも、本音の話も包み隠さずお話しいただき、そのことを担当者ご本人も笑いながらきいておられる。「こうやって、来ていただけると家族の意見も出るので、ありがたいですわ。いつも言わないですから・・」とのこと。第三者がいることで、いいづらいことが出ることもあるそうだ。お母様も「お話はいつも聞いております。ありがとうございます。ピアノもされる方ですよね」と、にこにこ笑って話しかけてくださる。これらのわずかの会話から、家族でがんばって経営されているこの会社のことがより透けて見えてきて、親戚のような気持ちになる。
そして2件目の訪問は、園芸用品などを作っておられる会社だ。
広報活動に大変熱心で、今やメディアにもよく登場され、すっかり有名になっておられる会社・・伺ってみると、社員の方が忙しそうに商品を作っておられる。どうやら、先日掲載された新聞記事の影響で電話注文が殺到しているようで、広報担当の専務は、伺っても鳴りやまぬ電話の応対に追われ、その注文のやりとりをしっかり聞かせていただくことになる。ご年配の方からの電話が多いので、ゆっくり丁寧に対応され、しっかり注文につなげていくその姿を見て、ああ、普段は広報だ、リリースだ、イベントだと一見、華やかな世界の話をしているが、現実はこうして手作業で商品を梱包し、荷造りをして・・・全部、自分たちでやっておられる。「昼間は作業できないので、朝早くきて一人で袋詰めしているんですわ」とエプロン姿の専務が笑いながら語ってくれる。社員とのやりとりにも心配りされながら、とにかくよく動かれる。普段見えない現場での働きぶりを知るにつれ、中小企業って家族経営って、町工場って、個人経営って・・・結局こういうことなんだ。みんな一人何役もやってがんばっているんだ!ということに改めて気づき、胸いっぱいになる。
帰りの新幹線から訪問お礼のメール、するとすぐに返事がくる。「今日はわざわざおいでいただいたのに、ゆっくりお話しできず、残念でした。でも忙しいところを見せられたので良かったです」というメッセージに、思わず笑みが出る。
地道に広報しながら、種をまき、そして花を咲かせ、刈り取る。すべての活動を自分の使命としてがんばっている姿を見て、こちらも勇気付けられる。いい方向に進むお手伝いが少しはできたかな。工場で作業される皆さんの顔を浮かびながら、そこで作られる商品への愛着も高まる。現場訪問はうるうるの旅だ。

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