「ご丁寧に」の後悔。

母の遺品整理を久しぶりに再開。
あまり整理しすぎることへの寂しさも募るが、
進めていかねばならない仕事だ。
どれを残し、どれを捨てるか。なかなかむつかしい選択だ。

郵便のなかに、何度も登場するAさんの名前をみつけた。
そのハガキや封書を見ると、同窓会の案内らしきものが
ほとんどだ。小学校の同級生のようだ。
へえ、こんな方がいたんだ。
と、顔も何も知らないAさんのことを想像した。

こんなに長きにわたり、郵便物が来ている方ならば、やっぱり連絡して
おいた方がいいだろう。と思って、
その郵便物に記載されている住所の横にある電話番号に勇気をもって
かけてみた。
最初はご自宅へ。いきなり携帯だと詐欺と思われて出られないかも。
しかし、出られないので、今度は携帯に・・・。
でも出られないので、そりゃ不信に思われるだろう・・としばらく待つ。
すると先方からかかってきた。着信に反応されたのだ。

「すみません。今尾敏子の娘の昌子と申します。はじめまして・・」
と名乗り、「母宛にたくさんお便りいただいてありがとうございます。
実は・・・」と母のことを報告した。
すると、電話の向こうでAさんはちょっと驚き、「そうですか~。それはそれは。
とてもお元気な人でね。そうですか~」なんども「そうですか~」
と言われ、「本当にご愁傷様です。ご丁寧に教えていただき、あ
りがとうございました。」と言われ、ご挨拶をして、電話を切った。

82歳~83歳だろう。母と同い年。
小学校の同級生。まず話がしっかり通じて安堵する。
そして、「ご丁寧にありがとうございました」と言われたことが、
あとでだんだん気になってきた。

もしかしたら、言わない方がよかったかも?いちいち報告しなくても
良かったのかも。
Aさんも、体調がすぐれないとのことをおっしゃっていたので、
そんな報せをきいて、悪化されるかも・・・。
であれば、余計な情報お伝えしなくても良かったかも。

と、電話を切ってからのAさんの心中を思ったら、後悔の念が
沸いてきた。

知らない方がいいこともある。知らない方がいいときもある。

お世話になった方なので、きちんと報告しておかねばと思い、
その意のままに行動したが、
ときには、それが相手にとって良くない場合もあるかもしれない。

「母の分まで、どうぞお元気に長生きしてくださいね」
とお伝えしたが、本当にそういう気持ちで電話を切った。
うーん。それでも言わない方が良かっただろうか?

母に話しかけてみる。
「Aさんに電話しておいたよ。良かったかな」
写真の母は笑っている。

だんだんいろいろ考える年齢になる。
「ご丁寧に」・・・気を付けよう。

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