あたたかくなり、暑くなるまでの間に、再び親が遺したものたちを
整理再開。寒い間、やる気がおきず、半年ほど放置していた。
こういう仕事は、気持ちがのって、一気にやらないと進まない。
ということで、連休の合間に少しでもやろうと、腰を上げる。
亡くなった当時は、なぜか勢いで片付けを進めていたが、
一度休むと、なかなかエンジンがかからなかった。
面倒くさいからだ。でも、結局誰もやってくれないなら、
早くやった方がいい。と言うことになる。
実家に残されている、謎の大きなスーツケースが数個。
何が入っているのか。主人たちが旅に出なくなって
何年も、まさに開かずの間状態。
なぜかずっしりと重いため、一体何が?と気にはなっていた。
コロナをまだ知らない幸せな時代、親たちが元気な頃、
本当に頻繁に旅に出かけていた。
70代まではアジア方面ではあるが、海外へも何度も出かけており、
その後は、国内に出向くことが増えた。
どこにそんなお金が?と不思議なぐらいであったが。
さて、今回初めて開いた、その大きくて重いスーツケース。
想像どおり、海外に旅したときのさまざまなものが保管されていた。
母にとっての「思い出の品々」である。
旅行会社から渡された旅のしおり、保険の控えから各地の観光パンフ、
ホテルの袋、はおり用の衣類などなど・・・。
現地で使った衣類はすぐ洗濯したであろうから、着なかったものは
また今度持って行こうとそのままそこに残されていたのだろう。
よく旅先で寒くなったら、雨が降ってきたらと持参する軽量防水の
上着。まさに旅行会社のガイダンスに従って用意していたんだろうな
とさまざまな様子が目に浮かぶ。
そして、その中から、その現地で調達してきたであろう、お土産品が
隠されていたかのように出てくる。
まさに、「触って触ってなんでしょう」といった、クイズ番組に
出演しているかのようだ。
「ん?硬いな。これ、何?石」
と他の荷物に紛れて、グリーンのパワーストーンなどが出てくる。
絶対に使わないような派手なプリントのテーブルクロスや、動物の
キーホルダー、ボールペン、怪しげな飾り物など・・・。
このスーツケースを開けなければ、出会うことがなかった世界の
個性豊かな小物たち。
きっと誰も着ないし、誰も欲しくないおみやげ物・・。
でも、母は誰かにあげようと思い、現地で購入し、大切に保管
していたのだろう。よく現地に行くと、その現地の雰囲気で
買ってしまうものの、帰宅するとなんか合わないなと後悔する
ことがあるが、そういう類のものである。
と、そんなことをやっている間に時間が経ってしまう・・・。
「今日はここまでにしよう」。
スーツケース数個を開けつつ、今年の連休は親たちが出かけた
旅につきあっているようだと、ひとり笑う。
楽しかったんだろうな。元気なうちにいっぱい出かけることが
できて、本当によかったな~。
どうみても「がらくた」いっぱいのスーツケース。ここには
リアルな親の人生のひとときが詰まっていた。
なかなか、片付けは進まない。
嫌な片付けだけれども、見ながら呆れながら、
親の一生を追いかけ楽しんでいる自分がいる。
どこか寂しいのは否めない。でも、慣れるしかない。