名残惜しき、寒い朝

朝は新たな1日のはじまり。
一日生きた「いのち」が、睡眠からの目覚めによってまた新たな命として、
生まれ変わる。
ああ、朝が来て良かった。と思うこともこれまでに何度もあった。

とくに私の場合は、冬の朝が大好きだ。
この季節に生まれたからかもしれないが、寒い朝、一歩外へ出たときの
シャキーンとしたあの緊張感がたまらない。
白い息を吐きながら、寒さに慣れていく感覚も良い。

今、ふとフランスで活躍したサン・サーンスの曲(チェロの音色)を耳に、
20代から40代にかけ、冬のパリに旅したときの冬の朝を思い出す。
朝7時になっても、まだあたりは暗かった。
それでも、人々は動き始めている。暗い朝に慣れているのだ。

コート、マフラー、帽子を纏い、身を縮めながら、
地下鉄の乗り場に降りていく人・・。
一歩、外に出るだけで、身も心も覚醒した。

暗い朝。寒い朝。
私自身も、町ゆく人々と同じように、その寒いなか
通りを歩きながらカフェを探し、いい感じの店を探し、
そこであたたかいカフェオーレをいただく。
寒い朝の一杯は格別だ。
そんなひとときを思い出し、心が豊かになる。
何十年前のことでも、昨日のことのように思い出す。

改めて、この寒い朝がとても好きだ。
だんだん、春の訪れとともに、朝の様相も変わってくるだろう。
新しい季節がうれしくもあるが、今しばらく、このままでいてほしいような・・・。
まもなく、別れることになるこの瞬間を大切にしながら、
想像をめぐらし、心豊かに春を迎えたい。
シャキーン。さあ、やるぞ!
の1日がはじまる。
毎日の時を重ねて、季節を巡り・・・。
次の冬が来たときの自分はどうなっているだろう?
早くもそんな想像を働かせている。


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