心に沁みる手作りPOP

個人のお店は、本当に面白い。
チェーン店にはない、大型店舗にはない、真心と、ちょっとした工夫がある。
昭和の時代、一世を風靡した岐阜の柳ケ瀬。美川憲一のブルースで一躍有名になった商店街。しかし、今は他の地方都市と同じく、町なかの店は寂しい限り。
でも、古き良き昔を思い出すために、なるべく通るように、ゆっくり見て歩き、何か面白いものを発見するようにしている。

そんななか、最近、気に入っているのが、写真の小さなこだわりの食品店。
地元限定の食材から、お惣菜から、お菓子・・・小さな食料品店。
店番はとても品の良い、やさしいおばあさん。人柄が良いのだろう。
途切れることなく、常連さんが入ってくる。
年をきいたら81歳だそうで、母と同じぐらいと思ったら、うるうるきた。
そして、
その店内で見かけるPOPが心に沁みる。
基本手作りで、シンプルだ。お年寄りにはすぐわかるだろう。
とくに「美味しいパン」と書かれたPOPに目が止まった。
マジックで何重にも書いた手書きで、決しておしゃれとかではない。
しかも、商品名ではない、一般名詞である。
でも、「美味しいパン」とだけ書いてあるところに、
お客さんの好奇心は集中する。
店の人が美味しいというから、さぞかし美味しいのだろう。
「このパン、本当においしいの?」と聞いたら
「おいしいよ~。店長おすすめ」とかえってくる。
余計な能書きはない。
すごい説得力だ。パン自体は、実は他でもみかける菓子パンだ。
また、美味しいだけの特徴ではない商品であるはずであるが、
この一言が、最大の特徴で、在庫が減っているということは
その言葉が、お客様に刺さっているのだ。

「おもしろいねえ。これ。最高。写真とっていい?」と
笑いながら、撮影させていただいた。
これこそ、小売店のあるべき姿。発信すべきメッセージだ。
本当に感動した。でも、私はパン以外のものを買ったけれど・・・。
このお店は、今ふるさとでお気に入りのひとつだ。
また、おばあさんと楽しいPOPたちに会いに行こう。
今日も柳ケ瀬で買い物する皆さんが、利用されるだろう。
近所の高島屋とは別世界。そこが気に入っている。
がんばってほしい!

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