冬のチューリップ

正月前に、チューリップを買った。赤と薄紫を3本づつ。
2色1セットにして、お墓と、実家と、自宅に分けた。
チューリップには、さまざまな思い出がある。
とくに冬のチューリップ。雪の日のチューリップ。

もう何年も前のこと、都内でライブをした日に、
お客様にバレンタインのサプライズとして、
新潟からチューリップを取り寄せた。
そのときに限って、大雪になり、電車が止まって何名かのお客様が
来られなくなったが、新潟の皆さんのご協力で、
チューリップの花束はちゃんと会場に届いた。
雪の中にかれんに咲くチューリップは、春を告げる元気の花だと
その花を1本づつお客様にプレゼントして、大変喜んでいただいた。

チューリップ生産の日本一は新潟。そこで毎年開催される花イベントで
トークショーライブに出演したことがあった。
花の歌も歌った。花に囲まれて、楽しい演奏ができた。
花が大好きな母は、
友人と一緒に、岐阜から新潟まで見学にやってきた。
いい新潟旅行だったと喜ばれた。

亡くなる半年前、自宅で過ごした母と私をつないだのは、一輪の花。
ときにバラの花、そして時にチューリップの花。
花瓶にそれがあることで、会話がやさしくなった。
「新潟へ行ったな。花ももらったな」
共通の話題も続いた。
花と音楽は、母とのかけがえのないコミュニケーションツールだったと、
今改めて思う。

だから、今も、墓に実家にと花をせっせと運ぶ。
咲いた、咲いた。
冬に咲くチューリップは、どんな寒くても、厳しくても
必ず春が来るよ。と
明るさと元気を与えてくれる。

さあ、今年の春に向け、どんな花を咲かせようか?

カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク