父がお世話になった施設に、最後の物の引き取りとご挨拶に向かう。
ベッドもテレビも、なくなった部屋に入る。これが最後の入室となる。
片付けの途中で、写真を撮らせていただいた1枚。
窓の向こうには、地元の神社。前方には天気によっては伊吹山も見える
ナイスロケーション。
この窓がある、角部屋だったから、選んだこの部屋、この施設。
地元だから、窓から馴染の風景が見える。
父は、何度もこの風景を楽しんだだろうか。楽しめただろうか。
いや、そんな気持ちにはならなかっただろうか。
私はいつも、この建物の前を通るとき、外からこの窓に向かって
ひとり手を振っていた。
火祭りで有名な神社。今年もコロナの影響で開催されなかったため、残念であったが、祭りが開催されれば、ここから壮大な花火の技が見えた特等席。
「年末も、花火もあがるんですよ」
と施設の方が教えてくれた。
父の最後の住処であったこの部屋。
「ほんとうにいい部屋ですね。私も住みたいですわ」
「じゃ、20年あとか30年後にどうぞ。」
冗談交じりに、父がお世話になった1年間、
そしてこの半年、2か月、1か月を振り返る。
父が最後まで、息をしていた、がんばっていた部屋。
今日で10月が終わる。
旅立った日も、こんないい日だった。
「いい日、旅立ち」を窓から、改めて願い、部屋を出る。
お世話になった施設の皆さま、
本当に、ほんとうにありがとうございました。