アディオス ヒロサ

父の名前は、「允碩(マサヒロ)」。
まず読めないから、昌弘というのが通称だったそうな。
そして、近所や地域の皆さんからは、「ヒロサ」と呼ばれていた。
ヒロさんの変形、方言か。

そのヒロサとのお別れの朝を迎えた。

尊敬するアストロ・ピアソラの作品の中に、「アディオス ノニーノ」
という曲がある。バンドネオンの奏者としても知られるピアソラが遺した、名作中の名作。弾くのも、聴くのも大好きで、聴くたびに、ピアソラの思いがあふれるハーモニーに胸がいっぱいになる。
この曲は、ピアソラのお父さんが亡くなったときに作られた曲で「さよなら お父さん」というタイトル。「ノニーノ」は、ピアソラがお父さんのことをそのように呼んでいた名前だそう。愛称だ。
この曲を聴くたびに、父親が亡くなったら、どんな気持ちになるんだ、こんなに広がる海のように、悲しいのだろうか。
といつも、勝手に想像してひとりで泣いていた。

そして、今日は、「アディオス ヒロサ」。
「さよなら、お父さん」、「さよなら ヒロサ」。

父の喜怒哀楽の人生に、万感の思いを込めて、「アディオス ヒロサ」。
私たちとの短い旅を終えて、
一歩先に出発した母、敏子に会うための 
新たな旅に出る父を、今日、しっかり送る。
父と母のためにつくった曲「ひと・文様」で、送る。

いろんなことがありました・・・。

感謝を込めて、
アディオス ヒロサ!

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