運転しながらお口も滑らか

路面電車がある町が大好きだ。私が生まれた岐阜でも幼いころはチンチン電車が柳ケ瀬を、長良橋を走っていた。他の交通機関の発達や地下鉄の登場により、路面電車が町から消えた・・という悲しい出来事が各地で続いたが、長崎市ではこの路面電車が今なお、市民や観光客の主な足として活躍。一回120円という手頃さ、一日乗車券で500円。何度か訪れるうちに、すっかり乗り方にも慣れ、込み合う車内も東京に比すればなんのその。5分ほどの間隔で次々とやってくるので、さほど待たされることもなく、また電車が渋滞にも巻き込まれず、実にスムーズだ。近年はラッピングカーももちろん登場し、レトロながらも斬新なカラーの電車に出会ったりすると、ああスポンサーがついたんだなとなぜかほほえましくもなる。この電車の利便性に加え、一番感動するのは、この電車を動かす運転士さんたち。ワンマンカーなので後ろから乗って前で料金を払って降りるというしくみ。いかにスムーズに、慣れない観光客もストレスなく、たくさん乗ってもらうか。
丁寧な言葉で、「乗ったらなるべく前に前にとお進みください。」「両替は早め早めに前の両替機でお済ませいただきますようお願いいたします」「混み合いまして申し訳ありません。つり革にしっかり捕まってお立ちください。」などなど当たり前のアナウンスではあるが、その言葉にやさしさがにじみ、マニュアルどおりではない親切さが伝わってくるのだ。ワンマンカーであるから、運転しながらアナウンスもして、料金支払いの確認も・・。いろいろ忙しいが、きっと運転しているときって気分爽快なんだろうな。子供のころからあこがれていた人たちがこの職業に就いておられるんだろうな~。降り口のところに、アンケートが設置されていることに気づく。おお、素晴らしい。東京の地下鉄やバスでは見かけない。アンケート用紙とボックスがおいてある電車なんて。気づいたご意見をお寄せください。というもので、回答が必要な場合は連絡先を書いてください。とある。乗った日時、路線・駅から運転士の名前まで
書く欄がある。徹底的なサービス向上のための管理をしている。最近ではタクシーでは時々このようなはがきはみかけるが、電車の中で投函できるとは、初めて見た。民間の会社の運営のようであるが、さすがしっかりしている。国際都市長崎は、おもてなしといちいち言わなくても、その努力がすでにされている。決して速すぎないスピードで、風をきって元気に走るこの長崎の路面電車。歴史とロマンを今日も運んで走っている。
image

カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク