実家の冷蔵庫には、まだいくつかの食品が残っている。
j住人は今いないが、日々、自分たちが時々使用するため、わずかな飲料や食品が入っている。
生ものは、もうない。
冷凍庫には、食品が今尚、少しある。
そこにおにぎりがいくつか、凍ったまま保存されている。
何気なく、冷凍庫を開ける。
「あ、あの日、作って持ってきたものだ」
おにぎり型のチラシ寿司。ああ、まだあったんだ。
小腹がすいていたので、それを取り出し、レンジで解凍し、いただくことに・・・。
このおにぎりは、母が緊急搬送された当日の朝につくって、
持ってきたもの。
持ってきたときに、母はすでに入院となっていたため、
とりあえず、急いで、おにぎりをここに入れた。
それっきりになっていたのだ。
そう、母に食べさせられなかった、おにぎりだ。
あたためたら、酢の香りが漂い、3か月前の朝が蘇った。
ゆっくりと、フーフーといいながら、
このチラシ寿司をつくった日からの時間を思い出した。
食べながら、胸がいっぱいになった。
これを、母は食べずに逝った。
冷凍食品のおかげで、少しタイムトリップをしたのだ。
もう同じものはない。食べずにもっとおいておけばよかったか?と自問する。
これからも、きっとチラシ寿司や、炊き込みご飯でおにぎりを作ると
母を思い出す。
食べ物で、タイムトリップ。
「おいしかったよ。ありがと」
喧嘩していても、こんなメールが届いた日々のことも思い出す。