もう退職してそろそろ四半世紀になる・・。
急に思い立ち、父が長年お世話になってきた会社を訪問した。
母のことのお礼のためであるが、外出できない父の代わりに。
郵送ではなく、お会いしてお礼を言わねばと思ったから・・。
最寄りの駅で電車を歩いて、記憶をたどりながら会社に向かう。
子どものころ、父が働いているときに会社に遊びに来ていた記憶が鮮明によみがえる。昔は、そんなもんだ。町工場に社員の子供が付いてきて、親の仕事の終わるのを待ったり、近所の神社などで遊んで待ったり、その神社のお祭りの様子も蘇ってきた・・・。良き時代だ。
と、私が覚えているその会社はもう半世紀以上前の姿。当時は木造。
今は鉄筋になっていた。建物は変わっているが、看板には懐かしい社名。
とにかく、大人になって初めての会社訪問。
母の件でのお礼だけのつもりで、アポも取らず、会社であれば誰か在社されているはず・・と、突然訪問した。
会社の前に到着。ちょっと緊張する。
ああ、ここだった、こんな感じだった・・・と。
「ごめんください」
ゆっくりと、会社の玄関のドアを開ける。
事務所で社長さんが、電話をされていたため、外で待たせていただく。
電話が終わり、玄関に出てこられた。
社長さんは二代目。父はその方のお父様(創業者)のお世話になった。だから現社長より父が年上であった・・から、父のことは少々扱いづらかっただろう・・・。そんな思いがずっとあったことも、思い出した。
社長は、私の顔はもちろん覚えておられない。親の名前を言って初めて、「ああ、これの・・・」と、手でピアノを弾くゼスチャーをして、笑って思い出してくださった。
父が働く会社でも娘がピアノをやっていたことは、知っていただいたようだ。
立ち話ではあったが、父の様子、今回の母のことの報告とお礼。
そして、
改めて、父を50年近く雇っていただき、良い定年を迎えさせていただいたことへ感謝の言葉を告げる。そして、最近出てきた昔の給与明細のことも・・。
今尾家は、会社のおかげで無事に暮らすことができたお礼を改めて告げる。
社長さんは、突然の客に対し、得意先対応をしながら、少し手を止め、
笑いながら、話を聞いてくださった。
急に伺って、ゆっくり話すのはお仕事の邪魔になるので、なんどもなんどもお礼を言いながら、失礼することに。
別れ際に、
「あのー、私、ピアノも今もやってますけど、それで食べているんじゃなくて、実は中小企業の・・・」
と現在の職業のことをひと言告げた。そして、
「もし、社長さんのお役に立てることあったら、父がお世話になった恩返しとしてさせてもらいますので、何かあったら連絡ください。これ、名刺です。携帯も書いてあります」
気が付いたら、こんなことまでしゃべって、名刺も渡していた。
「へえ、そうですか、そうですか。それはそれは、どうもどうも・・・。」
社長さん、びっくりされただろう・・。へんな奴状態だったかもしれない。
とにかく頭を何度も下げて、失礼した。
ああ、父の代わりに、御礼が言えた・・・。
子どもの頃、親に連れてこられた時の父の職場は、とても大きく感じたのに、
今になってみると、ああ・・・と、
これまで自分が訪問してきた多くの中小企業、町工場と同じだ。
きっといろんなご苦労があるはずだ。
コロナでどうなっているんだろう・・。
とても、そんな会話を今日はできなかったけれど、直感的に、
うん十年ぶりに拝見した、社長さんを見て、何かできればと思った。
また機会があれば、ぜひお話が聞けたらと思う。
父がお世話になった会社だから、長くがんばっていただきたいと。
会社の外観の写真を撮った。
次回、父に見せようと思う。
企業訪問代行人。無事、業務完了。はじまり??