癒しは悲しみを新たな力に変える「プル・パワー」

お父上が最近亡くなったという方に会うことになり、贈る花を選び迷う。いかにも「仏花」というのも、今の自分の気持ちが伝わりづらく、仏壇やお墓に供えるお花というよりも、大切な人を亡くし悲しみにくれる家族を勇気づけることができるお花の方がいい。そして、自分の好きな紫の花であれば自分らしく、失礼もないのでは、自分がその立場だったらもらってうれしいもの・・・そこで、みつけたのがラベンダーの鉢植え。色も形もやさしく、これなら今の自分の気持ちにもぴったりだ。「あ、私を選んで!」と、花が手を挙げているようにも見えた。
花屋さんにも花を贈る相手と主旨を伝えると、鉢植えであるラベンダーを贈るのは決して悪くないということ。そう、ラベンダーは癒しの花であるし、これはぴったりだ。
ということで、ラベンダーの鉢植えをかわいらしくラッピングしていただき、それを抱えて待ち合わせ場所へダッシュ、お会いした。
会うのを楽しみしてもらっていたこともうれしく、最初なんと声をかけたらいいかと思っていたが、その顔を見て自然にいつもどおりに言葉を交わした。
ラベンダーを選んだ意図を伝え、お母さんと彼女に元気に過ごしてと思いを伝えると、とっても喜んでくれる。「父は花が好きだったんですね~。最後は毎週花屋さんへいって違う花を買い、父に花を見せていました。花の香りを楽しんでいました。」と、喜んでいただく。花にまつわる話が出てくることで、彼女との距離が一気に縮まる。花のおかげで人は元気にもなり、癒しにもなる。
花は亡くなった人へのお供えの気持ちだけでなく、生き続ける家族へのエールとして、選び、贈るのもいいことを改めて実感する。
「早速、ラベンダーを飾りました。」という喜びのメッセージと写真が届く。一緒にお渡ししたザビエルのお菓子はおいしいもの好きだったお父さんにへと、仏壇にお供えされたとのこと。
元気になろうよ!というのはむつかしいときがある。さりげなく花のパワーから癒しを感じ、その後、気持ちが切り替わるのが良い。焦らず、自然に。そのうちに癒しの花のおかげで、悲しみを乗り越え、進み始めることになるだろう。
自然体に前向きに生きられる日はきっとくる。花を受け取った彼女は、別れ際荷物も手一杯にあるにもかかわらず、手をふり、見送ってくれた。
彼女が私にくれた、ミニブーケとミニレター。ああ、花花交換だったんだ。その愛らしい気遣いにこちらも思わずうれしくなる。
「人生って出会いと別れの繰り返し」お父上のことがなかったら、彼女にこんな風に向き合う時間はなかったかもしれない。
時間がかかるかもしれないけれど、癒しが次なる前進への新たな力になる日がきっとくる。静かに見守り、応援し続けたい。

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