母と父は携帯電話をセットで契約していた。すでに父はここ約半年、自分から電話をすることはなくなったが、母が生前、入院する前日まで電話を使っていたため、契約を継続していた。
今回、もう使う人がいなくなってしまったので、少し迷ったが、勇気をもって
父母の携帯を解約。
解約日までに、一応、ふたつの携帯のアドレス帳の内容を転載し、今後も
必要なときに連絡先がわかるようにとして、とスタンバイ。
解約日の前日に、久しぶりに父の携帯に電話に着信。まだかかってくるんだ・・。でも、今の状態では父が電話に出ることはないし・・・。
ということで、予定どおり、ふたりの携帯を解約した。
「この時点から、ふたつの電話、通話できませんので」と言われ、「はい」
と返事をし、電話機だけもらって帰る。
電話機だけでも、あると何となく気持ちが違うのも不思議だ。
父と母が使っていたこれらの携帯。ゴールドとピンク。
このガラケーから、どれだけ私や妹にメールを送り、
電話を鳴らしただろう。たんなる金属の塊となった今でも、思い出が詰まっている。デイサービス先で携帯をトイレに落としてしまった・・とこわごわ電話してきたのはまだ3か月ほど前のこと。「なんで、トイレにまでもって入るの!!」
とめちゃくちゃ怒ったときのことが、もう思い出のひとつになってしまった。
解約の翌日、父の電話に着信された相手の方に、確認の電話をする。
「父は施設に入って、もう電話ができないので、申し訳ありませんが
昨日解約してきました。もし、何か今後御用があれば、私にかけていただければ
父に伝えますので・・・」と私が伝えた相手は、前日父にかけてきた電話の本人、ではなくその息子さんであった。
もう80代を越えると、十分に電話ができない人も多い。子どもが代行する。
〇〇詐欺もあってのことだろう。
父、母と携帯。
電話やメールができた時間はとても元気であった。
もうそれで話すことも、聴くこともない。
たまらなく寂しい感じ。ひとつの時代がまた過ぎたような。
親の仕事をひとつづつ片付けるごとに、喪失感が増す感じだ。
それにも慣れると思う。
淡々と事務的な仕事をこなすように、ひとつひとつ前に進む。
心はちょっと脇において・・・。