あまりにあっけなく。

電話が鳴るとドキドキしてきたこの一年半。
とくにこの2週間は、いつも着信を気にしていた。
会話もしている、と聴いていたため、母は元気になり
復帰すると信じ切っていたところ、
ゆうべ19時ごろ、病院から電話。
この時間の電話は危険信号だと察知する。
呼吸も、脈も危ない・・・このままだと・・・と言われ
「すぐ来れますか?」と言われ、慌てて準備をして
名駅まで珍しくタクシーに乗り、JRに乗ろうとした。
こんな時に限って電車が遅れる。満員電車の中、
イライラしているところ、先に到着した妹が泣き声で
電話してきた。
「今、電車の中だから」と言って切ったが、もうその様子で
母が旅立ったのがわかった。
そのまま急いで病院に駆けつけた。
母の手とおでこは、まだほんのり、あたたかかった。
「お母さん、お母さん、起きなあかんて」
「お母さん、お母さん、また喧嘩するんやろ」
としばらく枕元で言葉をかけながら、
「もう楽になったね。本当にお疲れ様でした」
とそんな風に言葉が変わっていった。
人生初の、人を送るという経験。
悲しんでいる間もなく、次の段取りに追われて、
バタバタとすべきことをして、帰宅する。
戻ってから写真を探す。何かあったら・・と思っていたこの一枚が
本当に役に立ってしまうとは・・・。

反面教師と思ってきた母。でも、かけがえのない母が、あまりにあっけなく
旅立ってしまった。
コロナの影響で、面会もできず、それはちょっと本当に残念であったが
仕方ない。
悔いはないとしよう。
でも・・・。
しばらく気丈に進むとしよう。

お母さん、ありがとう。お母さん、お疲れさまでした。
ゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい。


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