サッカーというスポーツは貧しい国ほど盛んであると聞いたことがあった。
ボールひとつで大勢ができるから、そのほかにいろいろ道具が要らないから。
ルールもわかりやすく、見ている人も楽しめるから。
世界には、お金持ちが嗜むスポーツもいろいろあるが、サッカーが世界でも最も人気の高いスポーツになったのは、そのような背景があると思う。
だから、アルゼンチンでもサッカーが盛んなのだと聞いたことがある。
マラドーナ。
私はサッカーに詳しくないけれど、ブエノスアイレスに行くと、マラドーナのグッズが社会運動家チェ・ゲバラやエビータ妃のグッズと同じように、町なかで販売されていたし、まさにアルゼンチンのヒーローとして、会話の合言葉にもなっていた。日本でもアルゼンチンの話をするときは「マラドーナの国ですね」という会話から始まる人も多かった。
スポーツのすばらしさは、貧富に関係なく、人々に純粋に夢を与えることだと思う。そういう意味でも、アルゼンチンの人々に、マラドーナは夢を与えた。
将来ああなりたい。と思った少年は、数多いるはずだ。
経済効果が取りざたされる、オリンピックに夢は感じない。
純粋にスポーツを楽しむ。熱狂できる。ここが重要だ。
マラドーナの旅立ち。
ブエノスアイレス市内の大統領府に安置された棺に、墓地に向かう道に、大勢の市民が別れに駆けつけたという。まさに国が喪に服す3日間。
コロナで苦しむ、そして度重なる経済の悪化にあえぐこの国に、つねに夢を与えてきたのは、
この神の子といわれる、マラドーナだ。
アルゼンチンタンゴとサッカーへの熱狂。
いずれも生を、情熱を感じる。
人々に夢を与える存在になる。素晴らしいことだ。
そして、あの国から、第二のマラドーナが誕生する日を願っている。
この写真は、以前訪問した、ブエノスアイレスの郊外にある、 Jardin De Pas
というお墓の写真。美しい静かな墓地であった。わが尊敬するアストロ・ピアソラがここに眠っていると知り、足を運んだときの大切な写真。なんと、この墓地にマラドーナも埋葬されたようだ。熱狂と夢を世界に与えた、ヒーローの存在に敬意を表して・・。
いい空気・・という意味のブエノスアイレス。今日もきっと青く澄んだ素敵な空の下、あの紫の花ジャカランダが咲いて英雄の眠りを微笑み包んでいることだろう。
世界で一番遠いけれども、心ではもっとも近い、愛する国ブエノスアイレスに愛と祈りを込めて。