五感は人が人として生きていくうえで、とっても重要な存在だ。人間だけが備えている素晴らしい力である。それがあることで、人間は感動することができ、感じ合うことができ、幸せを実感できる。だからそれを意識しながら、生きることの大切さはこれまでにも何度も発してはいるが、その五感にもそれぞれ、特徴があり、それぞれに生かし方があるものだと改めて思い直すと、さらなる興味も湧いてくる。
たとえば「聴く」ということ。これはコミュニケーションに実は一番大切な「受容」の役割だ。コミュニケーションは双方向だから、受容できなければ成り立たない。人の話も音楽も、いろんな町の生活音も風のざわめきも・・。聴こえることで情景も浮かぶ。聴くこと自体では何かを発するわけではないが、聴く、聞こえるということは社会と自分の関係をとらえ、かつ対象をよく理解するのにも、とても重要だ。次に「見る」ということ。これも世の中を視覚的にとらえるのに、重要な機能だ。一対一で見つめ合うことから、俯瞰することまでいろいろ。自分が動けばその視覚の広がりも多種多様なものになる。さらに嗅覚。いろんな匂い、香り、臭い・・・いろんなものを鼻で感じ取る。嗅覚、臭覚は、快不快に直結する五感のような感じ、鼻が利くというのは判別に重要だ。「触覚」・・触れて感じるというのも、快不快に直結する感覚であるが、たとえば、「握手」はコミュニケーション上、とても大切だ。そして、「味わう」味覚・・・これは人間が生きていくうえで、生きる楽しみを倍増させてくれる機能であろう。
目が合い、手を触れる双方コミュニケーション、耳を澄ましてよく聴くコミュニケーション・・・。五感はどこか静かで、PULLではあるが、強い力をもっている。
「私が私が・・」と饒舌にどれほど語っても伝わらないこともある。相手の心に染み入るコミュニケーション、五感を磨くことは言葉を越える、国境を越える。音楽も美術もそこから生まれた。PULLである強さをもう一度見直してみたい。にこにこ笑いながら、人の話をしっかり聴いている人の方が、結果その存在自体が相手に伝わっていることもあるかもしれない。コミュニケーションはPUSHだけでは成立しない。
一見、目立たないこの五感の「PULL」の力をしっかり整え、鍛えておくことが大切だ。
「PULL」の五感を生かすコミュニケーション
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