3829への想い

3829とは、実家の固定電話の番号だ。
生まれたときは、まだ電話がなかったが、幼稚園か小学校にあがった頃に
黒い電話が自宅に設置された。もう今は資料館などの展示でしかお目にかかれないのでは?じー、じーとダイアルを回した頃が懐かしい。
その頃から半世紀経過。でも番号はずっと同じだ。

不思議なもので、自宅の住所や、電話番号というものは、すぐ覚え、また
忘れないものだ。いつ覚えたのかは定かではない。

10年近く前、父が車を購入した際、この3829をカーナンバーに指定した。
それぐらい、家族にとって愛着のある番号であった。父にとっては、愛着のあるナンバーで車への親しみもより湧いたことだろう
だが、これは結局、最後の車となり、今はもう、ない。

さて、この番号のことを、この数年ずっと迷っていた。
携帯電話を家族皆が使うようになり、自宅の固定電話はほとんど使わない。
むしろ高齢者だけが住む自宅であると、詐欺など悪事に使われる可能性も
高く、ますます固定電話は一般家庭においては、日々の暮らしから、
消えつつあるのが現状だ。

わが実家も同じこと。ほとんど使わないこの固定電話。本当に必要かどうか?
惜しいのは、その番号が消えてしまうこと。自分たちの番号がなくなるという
ことだけだ。このことが実は大きい。

ずっと悩んでいたが、このたび 思い切って、固定電話を撤去することにした。

自宅の電話番号がなくなるというのは、ちょっと悲しくもある。
別れがたい。
でも、仕方ない。人生にはいろんな別れがあるが、自宅の電話との別れ・・。これもなかなか・・・。である。

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