横田さんへの思い。

娘さんがある日突然行方不明になり、拉致されたとの報せから、その後ずっとずっと待ちわびて、ご夫婦力を合わせて、同じ境遇におかれたご家族たちと一緒に署名を集め、訴えを行い続け・・。そして、娘さんとの再会を果たすことができないまま、生涯を終えられた横田滋さん。

45年、娘を待ちわびた人生・・。どんな時間であっただろうか。
今、両親の老いと向き合う日々、親と同世代の横田さんの最期の思いは・・。想像するだけで胸がつぶれそうになる。

10年ほど前のことだった。
東京での新潟市の関係者の集いで、横田さんが拉致被害者家族会の代表として、参加されており、会場で名刺交換をさせていただいたことがある。
見知らぬ者、無名の私にも、名刺をくださった。一人でも多くの人にこのことを知ってほしい、応援したいという思いでおられたのだろう。
私自身、思いはあるけれども、自分が経験したことのない大変な状況を生きておられる、こんなにつらい人生をおくられている横田さんに気の利いた言葉をかけることもできず、ただ、頭を下げて
「がんばってください!」のようなことしか言えなかったほろ苦い記憶が蘇る。
そして、その後、何度もテレビで見るたびに、その時のことを思い出し、高齢にも関わらず精力的に活動を続けておられることに、複雑な思いになった。国は何をやっているんだろう。いつになったら・・・という気持ちもじわじわ高まった。

おそらく、昨年のことだったと思う。
出張からの帰り道、新潟空港で搭乗を待つ時間、ひっそりしたターミナル内で、ある展示コーナーをみつけた。横田めぐみさんに関するパネル展であった。
人手も多くない空港である、しかもその中でも人が行き来しない、目につきづらい2階のスペースにその展示コーナーがあった。偶然通らないと気付かなかった。
横田めぐみさんとご両親の写真や拉致問題の紹介展示を見ながら、もっと目立つところでやればいいのに、なんで、こんな誰も来ないような場所で・・・と思いながら、お会いしたときの横田さんのことを思い出していた。最近、テレビにも出ておられないが、お元気かな・・と・・・。

人生。最期は子供に送ってほしい。子が親を送るのが自然。
愛する娘に会えないまま、命が絶える・・・。
そしてともに戦ってきた、ご夫人の由紀恵さまの心中を想うと、たまらない。

うまく表現できない。
拉致。恐ろしい。こんなことが起きない世の中になってほしい。
心からお悔やみ申し上げ、長年がんばってこられた横田さんの
ご冥福をお祈りしたい。
この事件は、他人事ではない。



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