ぬりえ・あめ・かっぱえびせん

脳梗塞に倒れた父は数か月の入院先で治療と、リハビリののち介護サービス付きの老人施設に入所した。
以前のように、自力で歩行しづらくなってしまった点が帰宅できない理由のひとつ。申し訳ないと思いつつ、施設での生活を始めてもらった。
家に帰りたいと泣くのはその前の入院時から変わらず、とはいえその父の泣き顔に慣れることはなく、気の毒であり、そして情けなくもあり、申し訳なく・・で複雑な日々・・・。
そんななか、施設での生活も2か月経過。周囲の皆さまのお世話になり、徐々にそこでの生活も慣れてきたが、コロナ感染のため、週に三度そこから通う楽しみにしていたデイサービスも休止で、施設内で24時間過ごすしかない。
面会も極力避けなければならず、入居者にとってもストレスがたまりやすい。
それはとても理解できる。
そんな父がリクエストしてくるのは、ぬりえ、あめ、かっぱえびせん。
ぬりえは名画や風景など。自宅にいた頃は見向きもしなかったが、もともと職人であった父にはまあ相性が良いようで、飽きないよういろんな素材を用意し、届ける。色鉛筆からマーカーも・・。そして、あめとかっぱえびせんは毎日のおやつ。施設で出されるおやつだけでは、時間を持て余すらしい。ということで、飴は毎日3個と決め、食べ過ぎないように1週間分を袋に入れて渡すようにする。そして、かっぱえびせんは小さい袋のものを用意して、届ける。
かっぱえびせんが、80歳すぎて好きというのは面白い。父にとってのソウルフードだったのかもしれない。
数年前には、まさかこんな日がくるとは・・・。でもこれが現実だ。
なんともいえないながら、差し入れをもって週に一度顔を出す。
まともな会話ができているだけ、幸せかな。
すっかり立場が逆になってしまったような親子の関係ではあるが、父が求めるものを、ことをできるだけ・・・。いろんな申し訳ない気持ちが交雑する日々。
せめてコロナが早く終息してほしい。デイサービス再開を待つ父のためにも・・・。


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