最近知り合い、よくしていただいているお菓子屋さん。父の入院先に向かう途中で見つけたお店。
世の中に、こういった夫婦がいるのかと驚くほどの、あうんの呼吸ばっちりの
まさに「共働き」。30余年、先代から受け継ぎ、一緒に和洋菓子店を営んでおられる。
これから、そのお店の前を通る機会も減るので、しばらくお会いできなくなるかも・・と思い、お店に寄る。
少し話し始めたら、つい2日前に、愛猫が老衰で亡くなったとのこと。
そうだったんだ、、、。黒猫。名前はクロというそうだ。
17年もの間、どんなときもこの猫がこの夫婦を見守ってきたとのこと。店には
出てこないが、奥でいつもご夫妻とともにケーキ作りに参加していたのだ。
体調が思わしくないとき、このクロちゃんがご主人に寄り添ってくれた。猫といえども、立派な家族の一員である。
お二人の哀しみに触れ、何と言葉をかけたらいいか・・。
そこで、思い浮かんだのがお菓子!
「亡くなった人のことをずっと思っていればその人は生きていると、そう
思います。だから、ねこちゃんのことをいつも忘れずにいたら、ずっと見守ってくれますよ。そうそう、クロちゃんへの気持ちを託したお菓子を作ったら、
どうですか?」
というと、二人の表情が笑顔になった。
「??」
「今、猫が流行っていますよね。だから、猫のシルエットのクッキーとか
黒はフランス語でノアールだからノアール笠松とか、あ、そうだ。黒ネコの
ダンゴ。いいかも!」
といろいろアイデアらしき言葉を連ねているうちに、ご夫妻が大笑い
しはじめた。
「それ、いいわ。いいね。やるやる」
すっかり、元気になられたご様子。
猫ちゃんが彼らの中に戻ってきたのかもしれない。
お菓子屋さんだからこそ、できることがある。
哀しみを楽しさに代えて。
お菓子屋さんだからこそできること。
クロはお世話になったお二人をずっと見守ってくれるだろう。
K夫妻の愛猫クロちゃんのご冥福を祈って・・・。