先日出会ったご婦人の目は、話の途中で、赤くなり、じんわり濡れていた、ご家族の話題になったときにである。
近年、続けてご家族に先立たれ、毎日思い出す日々。お母様の夢は毎日のように見るとのこと。話しながら泣く彼女は、
「ごめんなさいね、こんな話をして。」
と、何度も言われた、初めて会った人間に涙を見せて、という恥ずかしさもあったのかも。
「いえいえ、こちらこそお聞かせいただいて、ありがとうございます。
涙は浄化作用があるので、涙を出すのはいいことかと思います。」と言うと、彼女はこう言った。
「いや、映画や音楽を見聞きして流す涙と、家族を思い出して泣く涙は違うんです。」
「泣くと目が痛いんです。痛い涙なんです。」
そういう涙は経験がなかった。そういう涙があるんだ。
悲しさから出る涙が痛いとは・・・。
この言葉の返事に詰まった。
映画や音楽で流す涙は心の浄化につながる。
泣いたあとにすっきりする。
でも、泣いても消えない哀しみは・・・
グリーフィングケアという言葉を聞いたことがあるが、
何かの経験や時間の経過から、彼女の哀しみが癒える日が来るといい。
涙が痛くならないような日が来るように・・・。
会った日から、毎日彼女のことを思い出す。今日はお元気かと、、。