作曲家の仕事、暮らしを想像する時間

19世紀に活躍したフランツ・リストが残した曲はいずれも難しい。
超越技巧などの言葉が曲名に付いている作品もある。私が10代後半、もっともピアノを練習していた頃に何曲か学んだが、いずれも確かに指だけでなく、骨の折れる難易度であった。
しかし、「ラ・カンパネラ」や「愛の夢」などの名曲は卓越した技術とともに、絶対なる美しさが表現されており、時代を越えて、世界中の愛好家に演奏され続けている。
このたび、これまで学んできた作曲家たちの内面や仕事に少しでも触れたいと
ベートーベンに続き、各作曲家のゆかりの場所を訪ね始めた。
まずはワイマールにある、リストの家に向かう。
今年設立100年を迎えたバウハウスと同じ町にある。
バウハウスより先の時代を生きたリスト。ベートーベンと交流もあったそうであるが、19世紀の芸術家の仕事や暮らしが見えてくる。
二台のピアノがある音楽室と、寝室。
リストはきっと寝ていても、メロディが湧いてきたら、起き上がってすぐに書き留めた、あるいは夜中でもピアノを弾き始めたのではないか。
今にもリストが起き上がってきそうな、簡素なベッド。

ワイマールは終の棲家にはならなかったようであるが、すでに著名になっていた時にこの静かな街に住んだのは、創作のためか・・と思いを馳せる。

誕生日を機に、あきらめかけていたこと。やりかけていたこと。
これに目を向けることを決意する。
新しいことだけでなく、眠っていた世界の目覚めも人生には大切だ。
しかし、18世紀~19世紀は、ヨーロッパでは精神世界が充実していた時代だ。
哲学も、音楽も、文学も。今の時代にも新しい、素晴らしき作品・思考が遺されている。これこそが、まさに世界遺産である。
人間には考える力、表現する力という無限の可能性があるということを改めて気づかされる。
それにしても、このベッドをみると、リストも一人の人であったのだと思えてくる。彼も1日24時間の人生を70余年生きたのだ。

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