4年前と同じ道を。

3月11日。あの東日本大震災から4年が経過した日。もうこの日が近づかないと話題にもならなくなってきた・・と被災地の知り合いから現地の状況を書いたメールが届く。時間とともにさまざまなことが変わっていく。時間とともにあの日の記憶が風化していく・・・と嘆いていた人もいた。それぞれ置かれた立場で思いもそれぞれだろう。でも、その現実は変わらない。時間がいくら経っても、なかったことにはならない。あったという前提で現実があるということだ。
この4年目の日、各地で雪が降ったが、東京は晴天。青空が美しい。たまたま打ち合わせに銀座方面に出て、気が付いたら有楽町の駅。そこで記憶がよみがえった。そうだ4年前の3月11日午後東銀座にいた。打ち合わせをしていたら経験したことのない強さでビルが揺れ、いろんなものがそこで止まった。でも、その現実がわからないまま歩いて有楽町の駅へ向かった。駅へ行き、なんだかえらいことになっていることを知った。電車も止まり、電話も通じず、待ち合わせしている相手をただ待った。1時間か2時か待った。連絡もつかず、やむなく諦め、それから術もなく歩いた。皇居の周りを歩いていけば帰ることができると思い、歩き始めた。普段見ない光景に包まれびっくりした。ものすごい大勢の人が皇居の周りを歩いて移動している。ヘルメットをかぶっている人やとにかく普段見るはずもない光景だ。怖かった。何がおきたんだろう。混んでいる道をそのまま押されるように歩きつづけた。途中、毎日新聞のビルでトイレに行こう、そして速報を確認しようとした。
ものすごい地震が起きていることしかわからなかった。そのまま歩きつづけた。相棒はどうしたんだろう、帰ってこれるかなとだんだん不安になり、泣きそうになり歩きつづけた・・・1時間半ぐらいかかったのだろうか。家に着いたら電気がついていて体中から力が抜けて、玄関に入ったとたん、泣いた。醤油びんがころがって部屋中にこぼれていたり、本棚の上から本たちが落ちていた。野村正樹さんの本がたくさん落ちていたことが思い出される・・・そしてテレビであの津波の光景を見て・・・。そのすべての瞬間が一気によみがえった。
私は青空のもと、そのことを思い出しながら、あのときと同じ道を歩きながら家に戻った。
「今日は歩こう。」急に4年前のことと同じことをしはじめたのだ。あれから4年日本は?周りは?自分は?
いろんなことを考えた。出会った人も、亡くなった人も・・。いろんなことを感じた。震災がきっかけで出会った人もある・・。こうして時間は流れていくのだと思い、それでも空は青く、そのときとはまるで違う。否、あの日も晴れていたはずだ。
大船渡で被災された知人が「自然には感情がないからね」と今回の震災の爪痕を指して話してくれたことがあったが、今日もそうだ。空は何もなかったように青く、春を待つような温かさだ。目の前にいなければ思い出そうとしなければ薄らいでいく。忘れたらなくなっていく。思い出して、今の自分が元気にあることに感謝して・・。本当の復興はいつまでかかるのかわからないが、東北の皆さんに心を寄せて、そして応援していかねば・・。

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