一命をとりとめた父との、病院での再会は大変緊張する思いであった。
いろんなことを想像しながら、病室へ向かう。
正直、横たわる父の姿はほとんど記憶がない。
とくにベッドを使う生活ではなかったため、父が病院のベッドに横たわる
場面は現実的ではなかった。
父は、点滴の管につながれていた。これも、先週には想像もしなかった場面。
急に弱弱しくなった父が、私たちに気づいて、一気に表情を変えた。
泣きそうになったのと、何かしゃべりかけたのだ。
あ、神経は大丈夫だ。判別できるし、反応しているし、その速度も遅くない。
と、目と口を見る限り、父は元気に見えた。
しかし、管につながれた父は、小さくなっていた。
それでも、元気づけようと普段通りに話しかけ、気弱なことをいっても
「大丈夫、大丈夫。また喫茶店に行こうね」
と、先週までと同じように話しかけると、
「歩けるようになったら」
というようなことを言い返してきた。
会話は成立している。
しかし、油断は禁物だ。
意識がある限り、生きる意欲も沸いてくるだろう。がんばってもらわねば。
最後まで、いつもどおり言葉をかけ、笑顔で普通に挨拶をして、病室を出た。
大げさに見えないように、こっちが気にしていないようにしないと・・・
父の寿命。自分の意識で、自分の力で伸ばしてほしいと心から思う。
何があっても、普通に接していこうと心に決める。
目と口。動きが止まらないように。