ふるさと岐阜といえば、長良川の鵜飼いが有名だ。
その独特な漁のはじまりは、1300年以上前といわれるから、驚きだ。
信長が、この鵜飼いをおもてなしにと奨励したそうで、長良川の鵜飼いが
岐阜の観光地として知られるようになったのは、信長のおかげかもしれない。
しかし、この鵜飼い。他の観光地でもそうかもしれないが、地元の人にとっては、いつでもある、いつでも見られるものという位置づけで、実際に屋形船に乗って鑑賞する人は少ないかもしれない。外からお客さんが来られたらお連れする、接待としてもてなすには最適の鵜飼い。
かくいう、私も船にのって漁火に揺れる古式ゆかしきその漁を見たことはない。
今回、その鵜飼いをやっている対岸にたまたま居合わせた。
近所の方、通行客の人が足を留め、堤防に腰をおろして、前方で執り行われる鵜飼いの様子を水面に移る明かりとともに遠目に眺め、拍手を送っていた。
この角度からの鵜飼いの様子は初めてみた。
総がらみという、鵜飼いのクライマックス。六艘の鵜飼い船が鵜を追い込んでいく場面だそう。
6つの船の漁火が、夜の水面に鮮やかに映り、それはそれはとても美しく、幽玄でもあり、松尾芭蕉の有名な17文字が浮かんでくる。
おもしろうて やがて かなしき鵜飼いかな
まさにこの句のとおり、鮮やかな漁火は、まもなくだんだんと静まり、暗さの中に沈んでいく・・・鵜飼いの盛り上がりのあと、深い夜がまた訪れる。
人生の陰と陽を思わせる、この美しき世界。
思わず、涙ぐみそうになるわがふるさとの名画のような、初秋の一コマ。
信長の時代も、江戸時代も・・そして苦難の明治を越えて、今も・・・。
日本人の心を表す、美しいこの鵜飼い。
昼も、夜も美しいこの長良川。
岐阜城からこの岐阜の町を信長も愛でていたと思うと、やっぱりロマンを感じるのである。
やがてかなしき・・・。人生はそういうもの。
そのやがて・・・がくるまでに、おもしろくなるようにしていくしかない。