てっちゃん、ありがとう。

てっちゃんとは、四半世紀前の元部下、後輩である。

今や、もう彼も40代後半になり、立派なお父さんであり、仕事的には
組織の中間管理職。

彼が20代のとき、私は会社を退職した。
後で本人からきいたところによると、
「あのときは、お先真っ暗でした」
ということで、今から思うと、本当に申し訳なかったなあと
思うばかり。

その後も、個人的には時々、当時お世話になっていた皆様と一緒に
会う機会があり、話をすることもあったが、二人でしっかり語ることは
なかった。
先に会社を勝手にやめていった先輩を、どんな気持ちで見ているだろうと思うと
複雑な思いもあり、また残業も多い業界で、なかなか誘うこともできず、
20年の月日が流れた。

でも、年賀状はずっとやりとりして、毎年丁寧な文字で書かれている彼の
筆跡に、若いあの頃をいつも思い出していた。

2年前、彼からの仕事の相談メールがきっかけで、それ以来、仕事で
やりとりがはじまった。
正しくは、彼自身とではなく、彼が在籍する会社のみなさんとの交流
である。そんななかで、彼とも昔のように、やりとりする場面も増えてきた。

そして、このたび、本当に久しぶりに二人で話す機会をもった。生ビールと枝豆ではじまったその時間は、本当に夢のようであった。
昔は上司と部下、今もなんだか変わらないような、とても親密な、とてもありがたい関係で、忌憚のない話をし続けた。

3時間近く話しただろうか。企画をしてきた人間同士の、根本にあるのは
世の中は黒子が動かしていることが多い。黒子ってかっこいい。頼れる黒子に
なろう、俺が俺がじゃなくていいから、頼られる人になろう。
企画をする人間でなければ、理解できないような、深い会話。

さらにうれしかったのは今の仕事が好き。と断言していたこと。
私も、今の仕事が好きだ。
てっちゃんも好きだそうで、
自分の仕事が好き!と言い切った彼の表情に、とてつもない成長ぶりを感じ、20年間離れていた間にこなしてきた経験が、彼の血と肉になっているのだと改めて思い、本当にうれしく思った。

てっちゃんが「娘が、今尾さんの後輩になりましたよ」と
お子様の大学入試の結果を報告してくれたことも本当にうれしく、
改めて、変わらずにあるこの関係に感謝の念が湧いた。

てっちゃん。いい笑顔を醸し出す。
いつの間にか中年になってきたのだけれど、私にとっては
変わらない弟なのである。

これからもずっと応援していきたいし、一緒に、お互いの元上司に感謝して、
恩返しできるよう、成長し続けたい。


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