マジシャンと数年ぶりに再会してから、会わなかった時間の互いの経験が再会後のやりとりにいい効果をもたらしている。もちろんそのことは相手によるであろうが、ずっと同じペースで会い続ける、ペースを変えて会う・・または会わなくなる・・いろんな交友・交流関係があるが、今回のマジシャンとの再会は、会わない時間がお互いを成長させているようで、とてもいいと感じている。
昔の自分より少しは成長したかもしれない自分を実感できるときがあるのがうれしい。
そのマジシャンが、珍しいモノを手に入れたと、超重量のお宝をスーツケースに入れてわざわざ持ってきてくれて、私に見せてくれた。
「マーサさんならわかると思って!」そう、見せたい、見せてやろうと思って、重い荷物をわざわざ持って現れたのだ。そのお宝とは、なんとマジックの550年の歴史を編纂した、オールカラーの素晴らしい名鑑。
幼き頃、家にあった誰も開かず、飾ってあっただけのあの分厚い百科事典を思い起こさせる大きさ、重さ。
そのボリューム、存在感もさることながら、そのコンテンツの素晴らしさ。といってもドイツ語、フランス語、英語併記のこの書を解読はできていないが見ていて楽しい、感動のアートブックだ。
手品の歴史はエジプト時代からというから、4000年以上だ。このことにも驚嘆であるが、現実世界でありえないということを見たい、知りたいという人間の不変の欲望の歴史にも興味が生まれる。
500年以上前といえば、16世紀。中世の時代からこの奇術というものが世の中に存在したのだ。
一部の富裕層のための特別なものであったマジックが、この長き時代を経てエンターテイメントとして普及してきた。今では、プロだけでなく、一般の人も手品を手軽に楽しめるようになってきているが、この長き歴史においてマジックの中に芸術性と、神秘性。また宗教的なものも私は感じた。
その図鑑に多くのイラストが挿入されているが、その描かれたマジシャンの周りに必ず、悪魔のようなものが描かれている。天使と悪魔の存在を表現するのが、マジックなのか?
また、奇術のプログラムもいろいろあるが、ギロチンとか人を縄で縛るなと一見恐ろしいものもある。もちろん結果、無傷!ということだから人々は楽しめるのだが、その瞬間のスリルを楽しみたいという人間の本性は何かとも考えさせられた。
とにかく、面白い本でさすがドイツの著名出版社であると感心。
いつかドイツの古本屋?ででも、入手できたら面白い。
人間の本性・・・。たとえばこのギロチン・・・は処刑の道具だ。
これをモチーフにする意図は何か?また、今世界を恐怖に陥れているあの集団たちはこういったことを現実にやってしまっているのが恐ろしいが、人間にはそういう願望が潜在的にあるのかもしれない。マジックとはその技術だけでなく、その根本にあるメンタリティが人間の本姓を現しているように感じる。
とにかくマジシャンが私に見せてくれたこの1冊の著作は人間の生きる現実と幻影との関係を考えさせてくれるきっかけとなった。
人々が幸せになるイリュージョンは最高だ。そのことだけを追求したい。
人間の幻影への憧れ
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