最小人数で店を回す、繁盛店

最近、居酒屋でも客席に設置されたタブレットを使って、お客がメニューを見て、選んで、そのままオーダーするというしくみが定着してきている。
もう10年以上前からチェーン店では導入されており、その当時は、「せっかく外食にきたのに、ネットでオーダーするなんて味気ない」とちょっと否定的で、料理を運んできてくれるスタッフにそのままオーダーすればよいのに、「ご注文はこちらからお願いします」なんて言われて、戸惑ったことも、今は昔。
その後、カラオケなどでも、同じしくみが使われ、世の中、変わったもんだと徐々に慣れてきたものの、やっぱり人に直接オーダーする方がいいなという持論は変わっていない。
 そんななか、静岡おでんを研究したいと、初めて静岡の居酒屋にたどりつく。迷ったなか、地元の人が進める、地元のチェーン店らしきお店を選ぶ。
おでん屋さんというと、もっとひっそり、カウンターごしに、店主と会話をしながら・・という感じなのかと思ったが、ちょっと違っていた。店頭に大きな鍋をおいて、もりだくさんのおでんたちがその中でスタンバイしており、豪快かつ楽しい。そんなおでん居酒屋。大変にぎわっており、予約なしでボックス席は無理、なんとか別室のカウンター席を案内され、座る。目の前に、大きなタブレット。カウンターが狭いのに邪魔だなと思ったが、メニュー&オーダーマシンだ。
それを見て、そこからオーダーする。目の前に、スタッフがいても、マシンからオーダーしないといけない空気。
最初は、「すみませーん。」とオーダーしそうになったが、他のお客さんの様子からも、手元でオーダーするのが良さそうだ。
最初、抵抗もあったが、料理がスムーズに出来上がり、テーブルに運ばれるのを見て、何の問題もないことを知る。料理を運んできた女性は、名札を見る限り、外国人だ。元気いっぱいで真面目なスタッフ。でも、料理について質問したりすると、ちょっと不安かもしれない。何より、「てんちょう~」と彼女が店長に質問すると、店長の手をとられそうだ。このお店、カウンター10名ほど、ボックス席含め、40名ほどは収容できる店なのに、なんとこの店長と外国人スタッフの2名でホールとカウンターを回しているのだ。しかもこの外国人スタッフの名札には、青葉マークもついており、入りたてということだ。
こんな忙しいお店、しかも人手不足には、この注文パネルは大変有効なのである。オーダーはマシンで受け付けるが、料理を運んでくるのは元気なスタッフ。そして、何よりも料理がおいしい!ここが一番だ。
飲食店である以上、まず美味しくなければならない。これが前提で、次はどうサービスするか。人手を割けない以上は、このやり方は大正解なのだ。
東京だけでなく、地方都市でも、この方法は定着しつつある。
無意味な動画をSNSでアップしてしまうような、人材がいるよりも、少なく効率的に回していくほうが、効率も良く経営的にも安心だ。
初めて入ったお店ではあったが、外国人の新スタッフを指導しながら、店を切り盛りしている店長に感動。(彼の風貌はボヘミアンラブソティ風である)
帰り際に思わず、彼の胸についた名札の名前で声をかける。
「ジョンさん。今日初めてきたけど、すごいね。こんな忙しい店なのに、よく二人で回されて。感動したわ。大変と思うけど、がんばってね」
すると、若き店長は意外そうな顔をして、
「いやー、そういってもらえると・・・。ありがとうございます」
店は、店長に支えられていると改めて実感。
静岡にはおでん屋さんはあまたあるが、またこの店に行こうと思った。
人材不足のお店で、がんばっているお店に心からエールを!

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