目の前のお客様に向かう仕事

若かりし日、寄席には、あまり足を運んだことがなかった。
よしもとは、幼稚園の頃からテレビで慣れ親しんでおり、土曜の昼は下校後、
親と昼ごはんを食べながら見ていたような・・。大変懐かしい。
なんば花月には、一度ぐらいは足を運んだかもしれないが、生で演芸を楽しむなんて、子供には贅沢すぎた。
ところが、東京に住み、近所にも落語家が住んでいたり、地域で寄席が多く開かれて、また自分自分自身も年を重ね、仕事の領域も広がってくるにつれ、芸人の仕事が大変気になり、生で見たいと思うようになった。
落語が好きになったきっかけはわからないが、一人で座ったまま、お客さんに向かって身振り手振りと話しだけで、新たな世界を見せる仕事というのは、本当にたいしたものだと思うようになった。
もちろん漫才も芸人によっては素晴らしいと思うが、落語はちょっと芸術的であるとも思う。
それ以外にコントも、マジックも・・なんでも学ぶことが多くあると思うようになった。
共通するのは芸人自身が、言葉や体を使って、人々を自分の世界に引き入れ、感動を与えるというところ。
芸人という仕事は凄い。
このたび、初めて大阪の寄席に行ってみた。かつてテレビドラマでも舞台になったところのようだ。大規模な寄席ではないが、平日でも8割以上お客さんが入っている。昼も夜もさまざまな催しをしながら、経営の安定を図っておられる様子。
10代の若き女性落語から、60代後半ぐらいのベテラン噺家まで・・。3時間の間に数名の演目を聴き、その合間にコントや皿回しなども観覧。
いやはや、素晴らしい芸っぷりに、楽しみながら感動。人前での話し方、表情、創作落語であれば、話の展開・・・などいろいろ考えながら、自分ならと思いながら聞き入っていた。
芸人の仕事をするから参考になるということではなく、たとえマーケティングの仕事だけをしていても、大変に参考になるのだ。

どうすれば、お客さんが喜ぶのか。お客さんの反応を目の前にその場で見ることができるのは、この上なき幸せでもあるが、試練でもある。
やっぱり、お客さんを目の当たりにする仕事はシビアである。
生の仕事。自分もそうだ。
もっといろんな芸人さんから学びたいと思った。

カテゴリー: Essay (Word) パーマリンク