自己満足と社会貢献の間で。

長年勤務した職場を定年退職され、その後、定年になったらやるぞ!と決めていたことに次々と挑戦。スペイン語の習得はもちろん、スペイン巡礼の一人旅。さらにこの年始は同じ巡礼地として、熊野古道を歩いた。

 そんな知人が名古屋で途中下車、久しぶりに会う。
今年は、もう一度、スペインへ。今度はポルトガル側から歩くとか、さらにはインカ帝国が眠る南米の国々を巡りたいとのこと。
海外だけではなく、自身のルーツである広島のある町にも今年は足を運ぼうと思っているそうだ。
スペイン語の勉強は継続、真剣に次の挑戦に向け、お会いするたびに学習成果が出ていることが、傍目にもわかる。
「定年後、好きなことができて、念願のスペイン巡礼も果たせて、さぞかし幸せですよね」
巡礼先で撮影したさまざまな写真を見せてくれるその人にさりげなく質問してみる。確かに巡礼地の旅では、毎日8時間歩くという行動が心をキレイにしてくれて、この上ない貴重な経験であったらしい。
「でも、今のこの暮らしは自己満足なんだよね。現役のときは、自分の仕事が社会に評価されることがうれしかった。今は、それとは違うね」
 その言葉を聴いて、仕事と趣味の違いが、改めてはっきりわかった気がした。
報酬の問題ではない。
自分の行動が、自分だけがうれしいか、周りもうれしいか、喜ぶか。
趣味とは自分の満足のための行動、活動。
仕事は社会とのかかわり、社会への働きかけ、社会貢献をしてこそ、自分の存在意義がわかるというもの。

人は自己満足だけでは生きられないのでは。
きっとこの紳士は、そのうち、現役時代とは違うペースであるかもしれないが、
社会の役に立てることに喜びを見出すべく、新たな旅を始めるに違いない。

 彼の旅の報告をきいて、そう思った。

自己満足じゃ、本当には満足できない。
社会貢献することで、自分も満足できる・・といい。

今はそのための準備期間なのだろう。
そのための巡礼の旅だったのだろう・・・・。

目を輝かせ、少年のごとく、旅の工程を話すその紳士。
きっと現役時代の職場では違う顔をされていたんだろう。

自己満足と社会貢献。つい、考えさせられるテーマだ。
後者が強くなればなるほど、プロフェッショナルなのだろう。






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