朝は決まって5時からの1時間はクラシックを耳に入れながら、仕事をする。仕事の手を止めてしまうほどインパクトがある音は朝にはふさわしくない。透明感のある、光がやさしく心に入ってきそうなそんな音色。高さは、人の声でいくと、ソプラノではなく、できれば男性の声が朝に似合う。甲高い声よりも、目の位置より下に響いてくる方が音がカラダにスーッと入ってきて心も頭も開かれていく感じがする。もちろん個人的な感覚であるが。
シューベルトの作品を生で聴いたのは、もう何十年も前であり、若すぎる時代にリサイタルホールで聴いたその楽曲は、当時の自分には地味すぎて、感動しない世界・・・。眠くなった。暗い会場でプログラムの解説を読みながら聴くのはちょっとしんどくて、結局何を歌っているのかわからず、声の迫力とか見栄えでしかその演奏家を判断できなかった。
最近は朝、テレビでその演奏を聴くと、字幕で歌詞もついてくる。歌手がこんな顔をして歌っているのは、ああこういう内容なんだと理解が深まると、その良さもわかってくる。
そんななか、ドイツの歌手がシューベルトとシューマンの歌曲を歌っているのを聴いた。ああ、なんという繊細な男心を描いた曲なのだろう。その歌詞を大切に歌うその歌手の表情にも知らぬ間に引き込まれていく。
インパクト、重厚感ではベートーベンやブラームスなどがロマン派の音楽家として不動の存在であるが、朝には交響曲より歌曲やピアノソロが良かったりする。
この季節は、とくにシューベルトの「冬の旅」がいい。200年以上前の世界を想像しながら、静かに朝のひとときを過ごすのは、とても良い。なぜか仕事と両立できるのも不思議だ。
シューベルト、シューマン・・・。もっと彼らの作品をよく知りたいと思えてきた。これは、男心がわかってきたという証しかもしれない・・。