懐かしきコンペ時代を思う

コンペ。といってもゴルフではない。企画のコンペティション。ひとつの仕事の獲得を目指して複数の会社が競うこと。コンペというのは時代が変わってもなくならない。仕事がある限り、会社がある限り、競争はなくならない。独立して15年間、コンペに縁がなくなったが、会社員時代の13年間は、本当によくあれだけ戦ったと思うほどコンペに参加した。デザイナーに無理をいい、企画書もまだパソコンではなくワープロの時代、パワーポイントなんてなかった。黒いボードにポスター案とか貼って、もっていった。企画書には製本テープだよ。なんてそんな時代だった。おかげさまでそのときからプレゼン慣れしはじめた。とはいえ、本当に練った企画、自分が考えたものでなければいいプレゼンはできないことも学んだ。それでも、仕事は企画の良しあしだけでないところで受注先が決まったりもした。その悔しさに涙をのんだことも数知れず。かと思えば、大手代理店や絶対勝てないと言われた相手を負かして、受注にいたったときは思わずガッツポーズをした。1000万以上という大きな額の仕事も印刷会社時代は多かった。とれたらラッキー、とれなかったら・・・。そんな世界で生きていた。そして15年ぶりに今度はコンペの審査の係を依頼される。
届いた各社の提案書を拝見し、思わず自分の20年前が蘇り、ああ、大変だな、こんな立派な企画書を作って・・・。とれなかったらどうするんだろう。といっても、どこか1社しかとれない話だ。その1枠を賭けて、各社が勝負をかける。点数をつけるというのは、本来したくないことだ。でも仕事だから仕方ない。
当日、複数の会社のプレゼンを聴き、質問もした。企業というのは面白いもので、その会社の得意分野が出るもの、そして会社のカラーや風土も出るもの。決して企画の良さだけで仕事は決まらず、いろんな意味での
総合力かなと聞きながら思った。
結果、1社に決まった。残りは残念な結果。でもその負けた会社にも次はあるし、この経験が次に生かされなければならない。コンペは仕事力を鍛えるにはいい経験。でも、とほうもないパワーが要る。
すべてのプレゼンター、クリエイターに拍手を送りたい。そして受注された会社以外のみなさんにも、ぜひ今後これを生かしてがんばってほしい。と心から思った。ひとりの若き女性のプレゼンターをみて、自分もあんなんだったかなと思うと、つい微笑んだ。がんばってください。コンペはビジネスマンを強く太くする。

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